ボクシングの「ミドル級頂上決戦第2弾」のゴングが鳴る前に、残念な知らせが届いた。

WBAスーパー、WBCの2団体統一王者ゲンナジー・ゴロフキン対元2階級制覇王者サウル・アルバレスの1年ぶりの決着戦。そのアンダーカードで組まれたWBA同級3位ゲーリー・オサリバン(アイルランド)対同4位デビッド・レミュー(カナダ)戦が、WBAスーパー王者挑戦者決定戦として認められたという報道だった。この決定は、認定団体としてのWBAの方針に関し、さらに疑問を募らせた。

思い返せば17年2月、WBAのメンドーサ・ジュニア会長は日本で会見を開き、スーパー、正規、暫定と王座が乱立する状況に歯止めをかけるために、一本化していく宣言をしていた。具体的には、スーパー王者は他団体のベルトも保持する統一王者に限定すること、統一王者が設置される階級は正規王者を空けること、暫定王座はけがなど正当な理由で正規王者が試合を行えない場合にのみ設置すること、以上を明言。18年までに統一させていくと説いた。

それから1年7カ月、状況は進んでない。レミュー対オサリバン戦の情報を知ると、一層そう思えた。WBAのミドル級の事情で言えば、統一王者として長く君臨してきたゴロフキンの存在が、正規王者や暫定を作らざるを得ない状況を生んだ。そして、現在の正規王者としてベルトを巻くのは村田諒太(32=帝拳)だ。であるならば、一本化という意味ですべきことは、挑戦者決定戦の承認ではなく、スーパー王者と正規王者による統一戦以外にないはずだった。

結果としてゴロフキンは敗れ、アルバレスが新王者となったが、次戦は挑戦者決定戦に勝利したレミューとのV1戦になるとの報道も出ている。統一という機運に傾く流れはなさそうだ。村田自身も、興行面での難しさからアルバレス戦を行うには、「2、3ステップ踏み出さないと行けない」と険しい道のりであることを認識している。

村田を取材する身として知りたいのは、きっと村田自身もそうだが、どれだけ強いのか、ということだ。正規王者にはなったが、スーパー王者がその上にいる事実からして、最強ではない。ただ、それはむしろ前向きな要素で、自分の力がどれほどなのかを追い求めることができる環境に、いま村田は生きがいを感じているように思う。そうであるならば、最強決定戦を見たい。

王座乱立はWBAだけの問題ではなく、ボクシング界全体を覆う。誰が一番強いのか。その単純な事実が分かりにくい状況は、ファン層の拡大への障害にもなる。「だって、誰がチャンピオンか分からないでしょ!」。昨年、具志堅用高氏は、声を荒らげて言った。4団体も王座認定団体があり、ただでさえ王者が大勢いる。その中で、さらにスーパーやら、暫定やら…。その通り、誰が王者か分からない。王者とは最も強い者であるべき。

アルバレス勝利で置かれてた状況を険しいと表現した村田。最強を追い求めるその道にも、しっかりと道筋が敷かれることを願う。

【阿部健吾】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」