こけしの勝利は遠かった。Bブロック開幕戦で、みんなのこけし、本間朋晃(38)が、G1クライマックスワーストの11連敗を喫した。昨年大会で史上初の全敗を喫し、初勝利を目指して永田裕志(47)と対戦。ファンの大声援を受けながら健闘したが、勝つことはできなかった。

 勝利への歓声が悲鳴に変わった。本間のダイビングヘッドバット、こけしは最後の最後で当たらなかった。ダイビングして頭突きを突き刺す、こけしロケットが前後から2連発。勝利は、もうそこまできていた。ファンもこけしコールで本間を後押し。しかし…。

 「物事は、こっちが思うようにはならない。でもまだ1回負けただけ。スタートダッシュに失敗しただけ」と、本間は強がった。G1で史上最多の11連敗。

 「プロレスでトップになって、有名になりたいんだ」。本間の心の叫びだった。昨年G1初出場で、史上初の全敗。ただの1勝も挙げられなかったが、かわされても、かわされてもこけしをやり続ける姿が、ファンの心をつかんだ。今年に入り、テレビ出演が増え一躍人気者になった。

 6月には全日本時代に付け人を務めた武藤敬司にテレビ局で偶然出会い「一緒に写真とってくれ」と頼まれた。「付け人時代は、ボクちゃんと呼ばれ名前も覚えてもらえなかったのでうれしかった」。試合開始前には、売店でこけしTシャツを販売。本間がサインするとあって通常の3倍を超す110枚を売り上げた。

 山形・東根工高2年で、新日本のテストを受けたが、体重70キロであっさり落とされた。高校時代は体育は「2」。でも、プロレスラーになる夢を捨てきれず、アニマル浜口ジムで修行。大日本などインディー団体を渡り歩いた。「高松でオカダに勝ってG1初勝利だ」。不可能を可能にするため、本間はこけしをうち続ける。【桝田朗】