吉田実代(31=EBISU K,S BOX)が新王者となった。ケーシー・モートン(35=米国)と王座を争い、左ボディー攻撃で主導権を握り、右アッパーなどの有効打で攻め続けた。ジャッジ2人がフルマークを付ける3-0の判定で圧勝。

東洋太平洋女子、日本女子バンタム級王座も保持する吉田が、男女を通じて令和初の新王者となった。これで吉田の通算戦績は13勝1敗となった。

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技術で、パワーで、そして気迫で圧倒した。吉田がセオリー通りにモートンを追い詰めた。接近戦から左ボディーブローを相手右脇腹にねじ込み、スタミナを削った。「ボディーが効いたと分かっていた」。くの字の体を曲げたモートンに対して右アッパーの連打。プロキャリア初のKOも狙えるほどの攻撃で確実にポイントを奪った。

大差の判定勝ちを知ると4歳の長女実衣菜(みいな)ちゃんをリングで抱きしめた。初世界戦の準備に集中するため、4月下旬から鹿児島の実家に預けていた愛娘から涙ながらに「ママ、おめでとう」と言われ、胸にこみ上げる喜びは頂点に達した。「娘のため、自分のため、絶対に負けない。負けることは考えていなかった。娘の食べたいものを食べ、娘が好きなところに一緒に行きます」。

高校卒業後の00年。20歳の時、地元鹿児島から心機一転、ハワイへの単身留学を決意した。総合格闘技ジムで練習を開始。帰国後、キックボクシング、総合格闘技を経てボクシングへ転向したが、14年5月のプロデビュー後、妊娠が判明した。交際中の格闘家と結婚し、15年には長女も誕生。一時期の引退状態、そして離婚も乗り越え、育児とボクシングを両立してきた。「20歳の時、こうなると思っていなかった。格闘技人生11年。世界王者になることができてうれしい。少しだけ自分に自信が持てます」と大粒の涙を流した。

令和初の新世界王者となり「少しでも自分も本物の世界王者になりたい」。戦うシングルマザーは強いオーラは発していた。【藤中栄二】

◆吉田実代(よしだ・みよ)1988年(昭63)4月12日、鹿児島県生まれ。小学2年~中学1年はソフトボール選手として活躍。中学卒業とともに母親のもとを離れ、仕事をしながら通信制の高校を卒業。20歳でハワイに単身留学し、総合格闘技を開始。帰国後、キックボクシング、総合格闘技などを経て14年にボクサーへ転向。同年5月、4回判定勝ちでプロデビュー。17年10月、日本女子王座第1号のバンタム級王座決定戦で高野人母美に判定勝ちで初代王者に。18年8月に東洋太平洋女子同級王座も獲得。身長161センチの右ボクサーファイター。