ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)が日本人初となる「聖地」での複数防衛成功を狙う。14日、横浜市内の所属ジムで6月19日(日本時間20日)の米ラスベガスでのIBF同級1位マイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)との防衛戦(WBA5度目、IBF3度目)に向けた国内向け発表会見に臨んだ。昨年10月のジェーソン・モロニー(オーストラリア)戦に続く「聖地」、ラスベガス2連戦で、KO防衛に自信を示した。

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余裕の表情からは時折、笑みものぞいた。日本人初となる2戦連続のラスベガス防衛戦へ、井上は静かに燃えていた。「ここからの1カ月はケガをしないように、気を抜かずに」と冷静。昨年10月のモロニー戦以来約8カ月ぶりの「聖地」帰還に向け「KOに対してのこだわりは、どの試合もあります。前回のラスベガスの経験もあるので、今回はリラックスして良い戦いをみせられると思う」とKO防衛への自信を示した。

ラスベガスの防衛戦で日本人王者は過去3勝2敗というデータが残る。西岡利晃、亀田和毅、井上の各1勝。井上がダスマリナスを撃破すれば、日本人初の複数防衛成功となる。前回の無観客と違い、今回は有観客興行。井上は「ラスベガスのお客さんの心をグッとつかんで帰ってきます。日本のファンにはテレビを通じて、勇気を与えられたら」とキッパリ。父真吾トレーナー(49)も「高いレベルで安定している。あとはナオが相手に何をするかが大事」と太鼓判を押した。

指名試合で拳を交えるダスマリナスは身長170センチのサウスポー。14年12月以降、6年以上負けなしの挑戦者だ。井上は「攻めて良し守って良し。どちらの形でも準備ができている」と自信は揺らがない。その視線の先には、4団体統一の目標がある。「今度の試合にしっかり勝ち、年内にもう1試合(3団体統一戦)。来春ごろに4団体統一」と青写真を描いた。

5月29日にWBC王者ウバーリ(フランス)が同級1位ドネアと対戦。8月にはWBO王者カシメロ(ともにフィリピン)がWBA正規王者リゴンドー(キューバ)と対戦する。大橋秀行会長は「この勝者たちと対戦する夢のカードへの大きな試合」と強調。聖地2連戦で複数防衛を達成すれば本場での評価はさらに上がる。ベルト統一の道へ、井上が最短コースで突き進む構えだ。【藤中栄二】