最近、個人的に気になったニュースがある。あまり大々的に報じられていない印象だが、テレビ各局などのニュースによると先月、東京・新宿区百人町の路上で、ネパール人の男女4人が、知人ネパール人(20)に殴る蹴るの暴行を加え、顔を骨折させるなどの重傷を負わせたとして警視庁に傷害容疑で逮捕されたというのだ。

逮捕されたネパール人は26歳の男や30歳の女らとされるが、この4人、在日ネパール人約50人規模で結成されているネパール人不良グループ「東京ブラザーズ」のメンバーとのこと。被害者男性の友人が事件の数週間前、この30歳の女とトラブルになっていたことが原因とされるが、4人とも容疑を否認しているという。

それにしても、1990年代半ばごろからこの種の新宿系ウラ案件はしっかりウオッチし、今でも街の“繁華街パトロール取材”は頻繁にしていたつもりだったが、「東京ブラザーズ」なるグループ及び、その勢力拡大は個人的にノーマークで、自身の情報収集力にもかげりが出てきたとみる。それはともかく、報道を総合すると、この「東京ブラザーズ」は恐らく、新宿の大久保&新大久保エリア(百人町などを含む)が拠点と推察される。

「大久保&新大久保エリアのネパール人急増」については筆者は実は、17年7月、レジャー面(宅配版)の、いまはなきグルメ連載ページ「おいしいお話」で扱った「新大久保周辺の“ガチ・ネパール料理店”ルポ」記事の中でも触れていたのだが、その取材の際、在日ネパール人にいろいろ聞いたものの、「東京ブラザーズ」の存在にまでは迫れなかった。取材力のなさをも痛感するものである。

そんなことはさておき、約2年前の当時の時点で、新宿の大久保&新大久保周辺エリアは、“リトル・カトマンズ”(※カトマンズはネパールの首都)とよばれるほどネパール人が集まる状況になっていた。

近年、就職や経験を求め、日本へ留学するネパール人学生が増えていることが背景にある(※法務省の統計によると13年12月の時点で短期滞在者などをのぞく日本在留ネパール人は3万1537人だったが、16年12月現在では6万7470人と、3年でほぼ倍増している勢い)。

そうした中でも、交通の便が良く、語学学校も多く、多国籍タウンであり、ネパール語新聞の発行元があったりする新宿区の大久保&新大久保周辺エリアに、ネパール人が急増することになったようだ。同エリアには最近、現地と同様の本格的料理を出すネパール料理店も増えており、筆者もその「おいしいお話」面の取材では、有名なネパールギョーザ「モモ」のほか、「フライドヤギ肉」「チウラ(干し飯)」「羊の脳みそ炒め」などを食べた。

さて、今回のネパール人不良グループ問題、冷静に考えると「警察当局は何をもって『不良』とカテゴライズしているのか?」という“不良の定義”に関する単純な疑問もわくが、今回の暴力事件以外にも、何らかの脱法行為を常態的にしているメンバーがいるであろうか(※あくまで推測)。

ただ、この件を報じたNHKのニュースによると、警視庁は現在、「東京ブラザーズ」などのネパール人不良グループを、準暴力団指定されている中国系の不良組織などのように勢力を拡大する恐れがあるとみて実態の解明を強化しているというから、事件系新聞記者としても要マークの対象になりそうだ。

ネパール人の不良グループといえば、東京・蒲田が拠点とみられる「ロイヤル蒲田ボーイズ」なる組織の男5人が今年2月、ネパール人留学生に対しネパール料理店内で暴行したなどとして、警視庁に傷害容疑などで逮捕されたと報じられたばかり。新宿だけでなく、同じく大きな規模の繁華街がある大田区の蒲田エリアにも「不良グループ」が存在するようだが、こちらも、この単発の暴力事件以外に、何を持って「不良」と言えるのかが気になるところ。

新宿・大久保通り、大久保駅と新大久保駅の間の未明でもネオンがギラギラ輝くエリア。歩行者は外国人のほうが多いと思われるほどで、アジア各国系の飲食店も非常に多い「多国籍タウン」状態になっている(※写真と本文に直接的関係はありません)
新宿・大久保通り、大久保駅と新大久保駅の間の未明でもネオンがギラギラ輝くエリア。歩行者は外国人のほうが多いと思われるほどで、アジア各国系の飲食店も非常に多い「多国籍タウン」状態になっている(※写真と本文に直接的関係はありません)

これまでのところ、報じられたネパール人不良グループによる事件は、同じネパール人に対する暴行などばかりのように思えるが、今後、日本人やネパール人以外の外国人に対しても「不良行為」のキバが向けられるのか。

凶悪化したり、さらに勢力を拡大したり、アジアを中心にさまざまな外国人が増えている大久保&新大久保エリアで、他国人のグループとの抗争が勃発したりする可能性はあるのか。また個人的には「東京ブラザーズ」なるグループ名のネーミングセンスや由来も気になるところ。

この後さっそく、新宿を電動自転車で“繁華街パトロール”しつつ、取材に入りたい。

ちなみに、ネパールはインドと中国に挟まれ面積約14・7万平方キロ(北海道の約1・8倍)。11年の統計で人口約2649万人で、ヒンズー教徒が約8割。

【文化社会部・Hデスク】