アニメ映画「メアリと魔女の花」(米林宏昌監督、7月6日公開)スペシャルトークイベントが22日、東京・六本木ヒルズアリーナで行われ、西村義明プロデューサーは、スタジオジブリで学んだクオリティーを保とうと挑んだ製作の苦悩を明かした。

 西村プロデューサーと米林宏昌監督(43)は、前作「思い出のマーニー」の製作準備をしていた13年に、スタジオジブリが製作部門を解散すると聞かされた。その後、14年7月に「思い出のマーニー」を公開し、同年末にスタジオジブリを退社して、15年4月にスタジオポノックを立ち上げた。

 西村プロデューサーは、苦労したことは、と司会に聞かれると「全部です。ジブリの作品が大好きでクオリティーを知っている。(ジブリが)30年かけて作ったクオリティーを再構築する…1日、1日、もがきながら作った。妥協のないのがジブリ。忘れてはいけないと思った」と“卒業”したスタジオジブリの看板に恥じない作品を作ることに腐心したと吐露した。

 質疑応答の中で「ジブリを超えたと思う部分はあるか?」と聞かれると、次のように答えた。

 西村P ジブリを超える、ということは思っていないですね。ジブリで学んだこともそうだし、生かしていきたいという思いもあった。ジブリのいいところは、面白いだけじゃなく、価値あるもの、今、作る意味がある映画を作る集団だったこと。1枚1枚の絵を描き続け、塗って、背景を書く…という愚直さが一種のジブリの志で、それを忘れたくなかった。

 「ジブリと違うこと、新しいことは出来たか?」と聞かれると、こう続けた。

 西村P あえてプロデューサーの立場からお話ししますが、米林宏昌監督にとって監督、映画人として3本目…勝負の作品になると思う。ジブリのふたみたいなものが外れて、やりたいことを全部、詰め込んだんじゃないか。「ジブリ人生約20年の全てを費やす」と明言してスタートしたわけです。その結果は作品に出ているし、僕らが新しいと思えるのは、米林宏昌の新しさが出ているんじゃないかと思うから。

 米林監督は「もう1本、映画を作りたかった。マーニーと逆の動くファンタジーを作りたいと言った。1番苦労したのは0から、何もないところから喫茶店をめぐり脚本を練ったところからのスタート。夢のよう」と感慨深げに語った。ジブリ流を貫きつつ、新しい領域に踏み込んだ手応えがにじんだ。【村上幸将】