日本代表の丸山茂樹ヘッドコーチ(51)が大会後に取材に応じ、銅メダルをかけたプレーオフに臨みながら惜しくも敗れた松山英樹(29)の戦いぶりや、大会の総括などを語った。日本勢は松山が3位に7人が並んだプレーオフの末に敗れて4位、星野陸也(25)が38位だった。丸山ヘッドコーチの主な一問一答は以下の通り。

-日本としては残念な結果

丸山 結果で言うと残念だけど、それ以上に素晴らしいものは見せてもらった。1打の重みを改めて感じた。たらればが山ほど合った。本人が1番100万倍悔しいと思う。(松山は)やっぱり終盤。前半はあのようにスタートすることはよくあること。良い雰囲気になった後、不安に残るようなことを1個、例えば5番のショートパット外したりだとか、そういうことは多少なりとも、ジャブが入ってくるのかな。ただ、9番のティーショットで吹っ切れたかなと思ったんですけど、11、12番と(バーディーで)いった後の、13番のミスとか、いいなーと思っていたらいきなりパンと足元をすくわれるとか、取っても取ってもまたかよというのはゴルフではよくあること。プレーヤーの心境を見ていると、そういうのって運命というか、あるんだなと思いました。

-(松山は)波に乗りきれなかった

丸山 簡単にまとめるとその言葉になる。それしか言いようがない。ゴルフの1番腹の立つ流れというか、こっちサイドじゃないとわからないかしれない。必ずこういう経験をいっぱいする。こういう経験しているザンダー(シャウフェレ)とかポール・ケーシーとか山ほどこういう経験して、たぶん今日もケーシーも何となくいけるのかなと思っていたら、あーっとなるし、試練を与えられる。また次が来る。ザンダーもマスターズで悔しい経験をして、次に同じことを繰り返さないぞという思いが届いたのかも知れないし。ゴルフは不思議なスポーツです。

-2日目はパットも絶好調だったが

丸山 (今日も)決して調子が悪いわけじゃないんだよ。たぶん平然としている時だったら、簡単にやれるんだけど、こういう風に多くの目がガッと集中して期待をされるがだけに、やっぱり平然とできない部分もある。たぶん皆さんが1メートルのパットをすっと、見られているところでやってごらんと言われたら、吐きそうでしょ。それと同じですよ、我々がやっているのは。それをいかに練習量で、緊迫しているときにどういうことをしたら打ち勝てるのかという常に戦い。何十勝しても。多分、その戦いだと思う。背負っている物がすごく大きいだけに、最後の締めに比重が来るというのがひしひしと伝わる。でも立派だった。

-金メダルを狙える位置で戦えたというのは

丸山 今、出ているメンバーに劣っているわけではないので、歯車がビシッとあえば。たらればがまったくなければ20アンダーになってるし、その中でひとついい仕事をした人が金メダルを取れる。ゴルフは毎週、そのドラマがあるからやってる方も見ている方も面白い。

-女子について

丸山 天気も暑い、男子の後でラフも急に短くもできないだろうし、このラフは女子にとっては…。最後、(18番で)英樹がぽんと入ったラフに入ってしまうと非常にタフな場面になる。我慢して戦い抜くしかない。忍耐あるのみ。女子チームもそういう気持ちで頑張ってもらいたい。

-日本での五輪について総括を

丸山 大会をやれたことに我々サイドは感謝しないといけない。一生に1回あるかないかの東京五輪。日本の皆さんが英樹と陸也を応援できなかったのは心残り。爆発的な声援があったら違ったのかもしれないし、このご時世不謹慎なことは言えないが、そこはさみしかった。でも無事に終われたのは良かった。

-順当な順位だと思うか

丸山 僕はフォーマットとしては国別対抗ならダブルスの方がいいとずっと思ってきた。その方が燃える。個人競技だと下の方の人が間延びしてしまう。ぶち当たって総当たりにするのか、W杯のようにするのか、ライダーカップもそうだし。国がつくならそうした方がいい。

-コロナで調整が難しかった。丸山さんからご覧になって苦しんだところは

丸山 プロゴルファーはその試合に照準合わせてぽんと出る人と、徐々に調子を上げて2週間、3週間でそこに合わせてくる人がいる。いろんなタイプがある。本人(松山)はコロナ明けで体力もない中、もうちょっと時間があって、1試合ぐらい軽く流せる試合があって、いろいろ確かめてからこの試合に出られたら大きな違いがあったかも。言い訳はしないだろうけど、第三者から見たらそこは悔しかっただろうな。ぽつんぽつんとやりたかったとずっと言っていたから。その不安を体調が悪くなった後にどんなゴルフができるのか1試合でもやれたらと。これがコロナ明けの試合で、次がもっと大きな大会だったら、こんな感じでやれたよ、次もっと自信を持ってやれたでしょ。そういう思いでここに来たかったというのがあるんじゃないかな。

-丸山さんから松山選手に何か話は

丸山 同情するしかない。ただ練習を見ていると、ただ者ではないとか、練習ラウンドを見てても本当に病気あけなのかなとか思ったけど。ただ本人はもっと高みを見ているので気に入らないものもあるでしょうけど。ゴルフはミスを減らして、スコアをつくっていくスポーツですけど、僕らから見ていると十分じゃない?と思ったけど、本人の不安は本当の意味で分かってあげられることができないので、それはいろんなものが最後に出たかな。体力の面とか。

-またすぐに海外に戻るとこのとだが、切り替えはできるか

丸山 それはもう。それができなきゃ7年も8年もこの位置でゴルフをやっていない。一流はそういう切り替えは得意ですよ。

-松山選手は大きな大会に何度も出ているし、ゴルフ界における五輪の価値についてはさまざまな意見があるが、逆にこの経験がどう生きるか

丸山 間違いなく悔しさいっぱい。何かで鬱憤(うっぷん)を晴らすでしょう。次、みんなをやっつけてやるという気持ちをひしひしと感じています。

-国を背負うとは

丸山 ワクワクする。最初は嫌だなと思うかもしれないが、やってみると、次やっつけてやるとなる。本人もそう思っているのではないでしょうか。

-さっき松山選手はパリ五輪には出たくないと言っていた

丸山 そんなことないですよ。まあそうかもしれないけど、もちろんあなたしかいないでしょと言われたら、俺がやらねば誰がやるとなるでしょ。

-丸山コーチもパリまで

丸山 それはちょっと待って。スーパーボランティアとしては、ちょっと考えさせて、年も年なんで。

-8番左のラフ、練習から注意していたと思いますが、松山選手でも出すのは難しかったか

丸山 上の木が気になったと思う。ラフの中でも低い球を打たないとと思った瞬間にあのミスになったと思う。1年の中で何回かああいうのはありますよ。