サッカー天皇杯でPK戦がやり直しとなった件で、当該の奈良クラブ(JFL=奈良県代表)が15日、奈良市内で会見した。

 出席した矢部次郎理事長(40)は、日本サッカー協会の決定に従い、PK戦のやり直しに臨むことを表明した。前代未聞、PK戦からのやり直しの実施日時、要項は近日中に日本サッカー協会(JFA)から発表される。

 問題が起きたのは、6日にパロマ瑞穂で行われたJ1名古屋グランパスと奈良の2回戦。1-1のまま延長でも決着がつかず、PK戦に突入し5-4で奈良が大金星を挙げた。

 しかし翌日、試合を見ていた審判員資格を持つというファンからの電話で混乱が始まった。奈良の4番目のキッカー、MF金久保彩は蹴る前に「ケンケンのしぐさ」をし、これがフェイントにあたるとして主審は蹴り直しを指示。しかし、昨季から、蹴る際のフェイント行為は、その時点でPK失敗のルールとなっていた。そのルールにのっとれば名古屋の勝利だった。

 矢部理事長によれば、8日にJFAから「主審による競技規則の運用の誤りにより、奈良クラブの敗戦とする」旨の通達があり、11日にPK戦やり直しの連絡があった。また、翌12日には、金久保選手の行為は、反則のフェイントにあたらないとの見解が文書で届いた。JFA側は奈良を訪れ全選手、スタッフに謝罪もしている。

 「選手は行き場のない怒りを抱き、すごく混乱していた。泣いている選手もいた」と矢部理事長。その後、選手との話し合いを重ね、今回の結論に至ったという。

 理事長が「私自身、どういうことが理解できなかった」という今回の混乱は、PK戦に限られたルールの適用にある。「審判の判断はさかのぼれないが、ルールの適用はさかのぼることができる」。つまり、金久保選手の行為を、反則のフェイントとした主審の判断にまで、さかのぼって覆すことはできない。しかし、その後のPKを「失敗」とせず「蹴り直し」にしたのは、「ルール」の適用の誤りで、さかのぼって正式なルールに従わないといけない。

 また、試合は、今回のPK再戦とは無関係で、延長までの1-1終了時点で成立しており、PK戦は、あくまでトーナメントを勝ち上がるチームを決めるための方式に過ぎない。そのため、試合結果そのものは有効で、PK戦からやり直す事態となった。

 矢部理事長は「JFAを非難するものでは決してなく、サッカーの発展に尽くしていきたい思いがある。ただ、ルールのところで多くの誤解が生まれるのではないか。周知を進めていきたい」と会見を開いた趣旨を説明した。多くの問題提起を含めた今回のPKやり直し。だれもが納得できる決着を迎えられるのか。