【光州=益田一弘】アーティスティックスイミング(AS)日本代表が、東京五輪でメダルなしのピンチに陥った。チームFRでロシア、中国に次ぐ3位を争うウクライナに敗れて4位。これでデュエット、チームの五輪種目でウクライナに4戦全敗となった。井村雅代ヘッドコーチ(HC、68)は前身のシンクロナイズドスイミングが五輪に採用された84年ロサンゼルス大会から指導者として9大会連続メダルを獲得中。自国開催の東京で「メダル請負人」が逆境に立ち向かう。

   ◇   ◇   ◇   

井村HCはプールサイドにいなかった。1番イスラエルから12番イタリアまで観客席で見守った。「何も得ないで帰るのはばからしい」。78年の日本代表コーチ就任から初めての経験。「選手はびっくりしていたけど、たくさんのことに気づいた。日本は振り付けはいい。日本には日本の良さがある。あとは同時性を外さないこと」と客観的な視点でヒントを得た。

3位ウクライナを超えられなかった。デュエットTR、FR、チームTR、FRですべて4位。日本にとって世界選手権で五輪種目メダルなしは13年バルセロナ大会以来6年ぶり。井村HCが携わった日本のメダルなしは初めてだった。

17年ブダペスト大会は五輪種目でウクライナに1勝3敗。これを契機に、身長170センチ前後の大型選手をそろえ、今大会で勝ち越しを狙ったが、差は開いた。

「メダル請負人」の歴史的な記録もピンチだ。井村HCは五輪初実施の84年ロサンゼルス大会から9大会連続、32年間にわたり五輪メダルを獲得。日本の指導から離れていた08、12年も中国代表で結果を出した。東京五輪は節目の10大会連続がかかっている。

布石は打った。井村HCは「逆転の発想で、何かの強さがあるから日本は4位にいる。リフトもうまくなったが、スピードが足りない。大変貴重な時間だった。次にいける。東京まで引かないことだけは確か。いくしかない。選手も自分も含めて」と宣言した。