東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長(77)が13日、都内で報道各社の取材に応じ、延期前に加入していた大会の中止保険と同等の保険には加入していないことを明かした。もし大会が中止になれば大きな保険金が下りないことになる。中止になった場合に国際オリンピック委員会(IOC)から違約金を求められるかについては「(IOCで)そんなことを言い出す人がいるかどうか、私には想像が付かない」と完全否定はできなかった。

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組織委には延期による興行中止保険金が約500億円おりた。しかし、延期後はコロナ禍で保険料が高騰している事情との兼ね合いで、前回同等の保険に加入することは見送った。

武藤氏は「前回はかなりの保険に入っていた。コロナで延期になった現状で保険をかけると保険料も相当高騰している。(加入している保険が)ゼロではないが、従来と同じような形で入るのは適当ではない」と語った。

もし大会が中止になった場合、大きな保険金は期待できないことになるが組織委幹部は「しっかり保険に入った時と、入らなかった場合の損害の額がほとんど同じだった」と加入を見送った理由を明かした。

中止になった場合の違約金にも話が及んだ。IOCと東京都との開催都市契約には違約金の記載はない。それでも昨今、ちまたではIOCから何かしら請求されるのではとの臆測も出ている。武藤氏は「最近、そういう質問が増えているが考えたことはない。あるのかどうなのかも見当がつかない。そもそも(IOCから)そんなことを言い出す人がいるのかも私には予想がつかない」と完全否定はできなかった。

ただ、違約金が発生する場合「(中止する理由が)どのような事情かが重要だ」と述べ、コロナ禍という世界的な異常事態を考慮すべきとのけん制も忘れなかった。

一方、中止になった場合、組織委予算に含まれるIOC負担金の850億円は返還する義務があるのかとの問いには「そのような話を(IOCと)したことがないので答えられない」と、現時点でそのような取り決めがないことを明かした。【三須一紀、木下淳】

○…武藤氏は海外から入国する大会関係者(チーム関係者、大会役員、メディアなど)が現在9万人ほどで、将来的にはさらに削減できると明かした。延期前は約18万人だった関係者だが、大会の簡素化で半減。加えて武藤氏は個人見解と前置きしつつ「コロナ禍でありもっと減らすべきだ」と述べた。この9万人には選手は含まれない。選手は日本選手団も含めて五輪で1万1000人、パラで約4000人となっている。