日本勢女子初出場となった女子1500メートルで田中希実(21=豊田自動織機TC)が世界を驚かせた。準決勝1組で日本女子で初めて4分を切る3分59秒19の日本新記録で5着に入り、決勝進出を決めた。

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予選は自らの日本記録を2秒近く更新する4分2秒33で4着で通過していた。田中はスタート100メートル付近でトップに飛び出すと、終盤まで先頭集団に食らいついた。ラスト1周を5番目で通過すると、他の選手のスパートに田中も負けじと加速。5番目の位置をキープしたまま予選で出した日本記録をさらに3秒以上更新してゴールを駆け抜けた。準決勝での決勝進出の条件は2組のうち各上位5着+6着以下のタイム上位2人。見事に着順で決勝に進出した。

レース後、田中はインタビューエリアで柵にもたれて、しばらく話ができないほどだった。「4分を切らないと決勝は難しいと思っていたので、今の自分の全力をぶつけようと思って走った。理想通りのタイムが出てうれしい。最初の100メートルで1レーンに空間が空いていて、すっと出ることができてよかった。ペースは速かくてきつかったけど、自分のリズムで走ることができた」とレースを振り返った。

陸上一家に生まれながら、幼少期は五輪に意識がなかった。母千洋さん(51)は北海道マラソンで2度優勝の実績を持ち、父の健智コーチ(50)も実業団でトラック種目に打ち込んだ。田中は「昔から全然、誰が速いとか知らなかった。本当に今の自分しか見えていなかった」。小学生の頃は100メートルに20秒要し「(5歳下の)妹とほとんど変わらなかった」と振り返る。

ただ、今につながる強い思いがあった。「前を走っている子がいて、負けたら悔しかった」。その連続が自らを高めた。女子5000メートルは無念の予選敗退だったが、日本勢は世界と戦えないと思われていた種目で、衝撃的な走りを見せた。「決勝はラスト1周にしっかりとこだわっていきたい」と、6日夜の自身最終レースの最後の最後まで、力を出し尽くす覚悟だ。