指揮官として五輪の魔物に苦しみながら、最後に激しく振るったタクトに選手が応じた。「24人という中でやるのが初めてだった。今日は勝ちにつなげられたが難しさを感じた」。稲葉監督は28人で臨むWBC、プレミア12から4枚のカードが減る難問を実感した。

試合が動いたのは7回。6回無失点、88球の山本を代えた。正午開始、31度の猛暑、初戦の重圧。6回、100球をメドとした。2番手は本来は先発で変則投法の青柳。だがスイッチヒッター4人を含む左打者5人につかまった。建山投手コーチは「7回は専門のリリーバーに託すところを、僕がこだわりすぎて山本から変則タイプにと。負担を掛けてしまった」。本来は8回を担う平良を2死一、二塁から投入し、傷口を最小限にとどめたが、持ち場は揺らいだ。「今後は7回以降は専門職で行きたい」。反省し、希少左腕の岩崎は臨機応変に山崎、平良、栗林で終盤を固めていく。

攻撃では7回の好機に代打を送らず、追いつけなかった。だが最終回は1死一塁から菊池涼に代打近藤。「独特のスライダーに左打者で引っ張って一、三塁を」(稲葉監督)。1死一、三塁では延長10回のタイブレークが頭にちらつくも三塁走者に代走源田を送り、確実に同点を狙った。さらに甲斐には2球連続でセーフティースクイズを敢行させた。結果がすべての五輪で難問を瀬戸際で解いた。【広重竜太郎】