入江聖奈(20=日体大)が金字塔を打ち立てた。決勝で19年世界選手権覇者のネストイ・ペテシオ(フィリピン)に5-0で判定勝ちし、日本勢では64年東京の桜井孝雄、12年ロンドンの村田諒太に続く3人目の金メダリストに。ロンドンから採用された女子で日本から初出場し、一気に頂点をつかんだ。

きっかけは、小2で読んだ『がんばれ元気』。ボクシングを題材にした漫画に、「ただ殴るのではなく、自分自身に向き合い、かつ相手を殴らないといけない。深い」と子どもながらに引かれた。格闘技に興味がなかったのに、気持ちが動いた。それが始まりだった。

1カ月後、母に懇願し、知人だった伊田会長が経営する「シュガーナックルジム」に入会。それまで新聞紙を丸めてグローブ代わりにしていた少女は、初めてはめた本物の感覚にとめいた。気づけば、中学校1年生で、鳥取県で唯一の女子登録選手になっていた。

それからまだ8年。小6で東京開催が決まった時、「自分が出るんだ」と周囲に宣言した。直後の地方大会で優勝しても、「自分は五輪に出るから通過点なんだこれは」と言った。大口に苦笑する周囲をよそに、本気だった。その言葉を現実にし、この日、世界で一番強い女子ボクサーになった。