初出場の渡名喜風南(25=パーク24)は決勝で世界ランキング1位のディストリア・クラスニチ(コソボ)に敗れて銀メダルだった。今大会の日本選手団金メダル1号は逃したが、日本勢として夏冬通算500個目の記念すべきメダルとなった。試合後は悔し涙を流し、「最近は決勝で勝てていなくて、その怖さがあった。自分の弱さが出てしまった。しっかりこの負けを認めていきたい」と、言葉を絞り出した。

格闘家のような五輪仕様の刈り上げヘアで気合十分の25歳は、準々決勝で16年リオデジャネイロ五輪金メダルのパレト(アルゼンチン)に腕ひしぎ十字固めで一本勝ちするなど好調な滑り出しをみせていた。

17年世界選手権を制してから勝ちきれない時期が続き、「安定感」を求めて心技体を磨いた。18、19年世界女王で身長172センチのビロディド(ウクライナ)対策も入念に準備し、勝負どころでの組み手さばきを強化。コロナ禍以降は、投げられないように体幹も鍛えて総合力を上げた。準決勝ではそのビロディドを延長の末に破って決勝に駒を進めていた。

我慢の柔道を心掛けた。結果に一喜一憂するのではなく、目の前の1試合1試合に集中してこの日に臨んだ。今大会を「通過点」と位置づける柔道家の戦いはまだまだ続く。

◆渡名喜風南(となき・ふうな)1995年(平7)8月1日、神奈川県生まれ。9歳で競技を始める。東京・修徳高-帝京大-パーク24所属。17年世界選手権優勝、同ワールドマスターズ大会優勝。18、19年世界選手権2位。左組み。得意技は小外刈り。世界ランク3位。勝負めしはお汁粉。趣味は読書。148センチ。