東京オリンピック(五輪)第2日の24日、競技が本格化し、柔道など各競技の表彰式でメダルと副賞の花束「ビクトリーブーケ」が選手に贈られた。ビクトリーブーケは、主に東日本大震災で被災した東北3県の花が使用されている。震災復興や支援への感謝を世界の人に届けるのが狙い。明るい色を基調とし、復興の進展を表すシンボルにする。

五輪のブーケには、福島県産トルコギキョウ、宮城県産ヒマワリ、岩手県産リンドウ、福島県産ナルコラン、東京都産ハランを、パラリンピックのブーケには、福島県産トルコギキョウ、宮城県産バラ、岩手県産リンドウ、東京都産ハランを使用予定。東京都産のハランは、主催都市・東京で大会開催の準備に従事した人々を表している。宣伝目的ではないことから、産地の詳細や生産者は公表されないルールになっている。

トルコギキョウは福島県が県ぐるみで生産に力を注ぐ。震災で農作物の出荷が減った際、花栽培で復興のきっかけを見いだした。福島県浪江町の川村博さん(66)は福島第1原発事故後、トルコギキョウなどの花栽培に一から取り組み、花卉(かき)業界から一目置かれる存在になった。

川村さんによると、浪江町は原発事故前、花農家は0軒だったが、少しずつ増え、来年には10軒になる予定。「海外の方に足を運んでいただき、ここまで復興した被災地を知ってもらい、風評被害を払拭(ふっしょく)する絶好の機会でしたが、コロナで海外観客は断念になった。残念です」。ビクトリーブーケを通じて「被災地の花ということだけでなく、世界をリードするクオリティーを持つ日本代表の花にまでなったということを、テレビを通じて、ぜひ世界の人に知ってほしい」と望んでいる。

五輪・パラ合計で約5000個を用意する予定。記念に持ち帰れるようにと、五輪マスコット「ミライトワ」、パラリンピックマスコット「ソメイティ」のぬいぐるみがそれぞれのブーケに取り付けられる。ブーケ贈呈は過去2大会では花の調達の問題で行われておらず、14年ソチ冬季五輪以来、3大会ぶりの復活となる。【近藤由美子】

◆ビクトリーブーケ 五輪で贈られるようになったのは84年ロサンゼルス五輪といわれている。98年長野冬季五輪では長野産アルストロメリア(百合水仙)を使用。00年シドニー五輪ではカンガルーの前足のような花を咲かせるカンガルーポー、クラスペディア(キク科)、オオニソガラム(ヒヤシンス科)などを使った。04年アテネ五輪ではオリーブの冠がメインになったが、オリーブの葉やガーベラのブーケも贈られた。08年北京五輪のブーケはバラを中心に中国らしい赤でまとめた。12年ロンドン五輪は国産のピンク、オレンジ、黄色、黄緑のバラにラベンダー、ローズマリー、小麦、ミントを円形にまとめた。16年リオデジャネイロ五輪から生花ではなくメダル置きに。18年平昌(ピョンチャン)冬季五輪でも平昌の山並みをモチーフにしたオブジェだった。