男子400メートル、1500メートル(車いすT52)の世界記録保持者の佐藤友祈(31=モリサワ)が、400メートルで金メダルを手にした。55秒39で自己記録から0秒26遅れたが、前回リオデジャネイロで敗れたレイモンド・マーティン(米国)に雪辱した。上与那原寛和(50=SMBC日興証券)も銅メダルで続いた。男子5000メートル(視覚障害T11)では唐沢剣也(27=群馬県社会福祉事業団)が銀メダル、和田伸也(44=長瀬産業)が銅メダルを獲得した。
◇ ◇ ◇
残り20メートル。佐藤は先行するリオ五輪王者のマーティンを追った。車いすの車輪の回転速度が増す。「後半の伸び、もがきをしっかりやれば届くと信じて走り抜けた」。一気に差し切ってゴールに飛び込んだ。タイムは55秒39。目標とした自身が持つ世界記録(55秒13)の更新はならなかったが、大会記録で制した。ゴール後、マイクを向けられると目から涙があふれた。
「マーティン選手にリオで敗れて、東京でのリベンジを目指してやってきた。バックストレートで差し返すことができて、見てくれた人もドキドキ、楽しんでもらえたんじゃないかと思います」
パラ選手のすごみを体現したかった。「介護、介助されないと何もできないというイメージを覆したい」と誓ってきた。12年ロンドン大会をテレビで見て競技を始め、16年リオデジャネイロ大会では両種目とも銀。18年に2種目とも世界記録を樹立し、17年、19年の世界選手権では2冠を果たした。君臨してきた自負があった。
岡山市内の企業で働きながら鍛えてきたが、今年2月には支援企業を得て「プロ」を宣言した。「何か面白いことをしたかった。パラスポーツを発信することで、周囲を元気にしたかった」と決断した。もともと目立ちたがり屋の性格で、SNSの音声メディアなどで積極的に発信を続けている。「ほぼ2倍になった」という練習だけでなく、体のケアに充てる時間も増え、自信は深まっていた。
表彰式では、大会特別親善大使を務める香取慎吾から祝福された。「祈」のフランス語から命名されたチーム名「prierONE(プリエワン)」を提案してくれた縁があった。「しびれた、格好良かった」。その言葉がうれしかった。「次は世界記録で金メダルを狙います」。29日の1500メートルで、再びしびれるレースを見せる。【阿部健吾】
◆佐藤友祈(さとう・ともき) 1989年(平元)9月8日、静岡県藤枝市生まれ。静清工高(現静清高)卒業。21歳で骨髄炎にかかって左腕と下半身にまひが残った。12年のロンドン・パラリンピックを見て車いす陸上を開始。前回リオデジャネイロ大会は400メートルと1500メートルで銀メダル。18年に2種目とも世界記録を樹立。17、19年の世界選手権で2冠。岡山市在住。モリサワ所属。
◆競技用車いす「レーサー」 重さは8~10キログラム程度でフレームは軽くて丈夫なアルミニウムやチタンで作られる。車輪の直径は後輪2つが70センチ以内、前輪が50センチ以内。後輪のハンドリムをこいで進み、レバーを操作して前輪の向きを変えてコーナーを曲がる。長さや幅、座る位置の高さ、車輪の角度などは各選手に合わせて調整される。スピードはトラックの平たん部では時速30キロメートル前後に達する。







