異なる障がいのある4人と、コックスと呼ばれる司令塔役の計5人が力を結集させた。視覚障がいのある有安諒平(34=東急イーライフデザイン)と木村由(ゆい、17=文京盲学校)、運動機能障がいのある西岡利拡(49=ヒロタニ)と八尾陽夏(はるか、24=三井物産ビジネスパートナーズ)、健常者のコックス立田寛之(29=戸田中央総合病院ローイングク)で形成するチーム日本。12カ国中最下位に終わったが、3年後のパリ大会出場に向けた大きな経験を積んだ。

有安は柔道経験を生かした腕力でオールを力強く漕ぎ、中心を担った。「悔しい気持ちもあったし、この5人でチャレンジ出来て良かったなと感情があふれてしまった」とゴール後は涙。「もっと強い日本チームとしてパリの舞台に立てるようにやっていきたい」とさらなる高みを目指す。来年の冬季北京パラリンピックでは、クロスカントリースキーで出場権獲得に挑む予定だ。

左手のまひで右手のみでオールを操る西岡は「水をしっかりとらえられず、空振りミスオールをしてしまい、体勢が崩れてしまった」と反省。50代でのパリに挑む決意も固め「体力が衰えないように維持し、技術的なところで伸ばしたい」と気持ちを高めた。

木村は今年2月、コロナの影響で辞退した女子選手に代わって合流した。「夢舞台に出られたらいいなというのはありましたけれど、パラリンピックは選ばれた人しか出られないのに、トントン拍子で来すぎちゃって…複雑な思い。パリへの思いはガラッと変わってくると思うので楽しみ。次につなげたいし、上の順位で戦いたい」。まだまだ成長過程だ。

八尾は今大会限りでの競技引退を決めて臨んでいた。大東大2年時にパラ陸上からボートに転向。選手村では陸上日本代表のスタッフや、仲の良い走り幅跳びの高桑早生とお互いを高め合っていたが「中盤から後半に、漕ぎが1つにならなかった」と無念の表情。今後は社業に専念しながら、未来ある子どもたちに「みんなで1つのことに向かって頑張っていくのはいいことだと伝えたい」と目を潤ませた。

今大会は開催国推薦枠での出場だった。立田は「次は(1カ国でも)勝たせられるコックスになりたい。(勝つ要素は)まだ足りないです。(他国と)差が広がっている感覚はないのですが、自分たちがもっと強くなれる。パリまでにどれだけ世界との距離を縮められるかが、より明確になった」。パリ大会の出場権をつかむことが簡単ではない状況もしっかりと受け止め、東京の悔しさを晴らすつもりだ。【鎌田直秀】