サッカー男子日本は、3日に初の決勝進出をかけた準決勝で優勝候補スペインと対戦する。

開幕直前の7月17日に行われた国際親善試合は、1-1で引き分けた。日本に劣らず、A代表組の多くを招集することに成功した強敵。チーム作りや戦い方、日本人との関係など、同国の事情をスペイン在住の高橋智行通信員が読み解いた。

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スペインはこれまで五輪10大会に出場し、自国開催の92年バルセロナ五輪で金メダル。他に2つの銀メダルを獲得している。一方で前回のリオデジャネイロ五輪は出場できなかった。

▽事前準備 欧州では、U-21欧州選手権が五輪予選を兼ねる。スペインは19年に同大会で優勝し、出場権を手にした。ただ通常は五輪世代の代表チームは存在せず、今回の代表も19年の優勝以来、約2年ぶりに集まった。日本に入る前には、国内で多湿とされる沿岸地域で12日間の合宿を行ったものの、日本の湿度よりははるかに低く、準備ができたとは言い難かった。

▽選手の招集 優勝候補に挙がる理由は、有力選手をそろえることに成功しているためだ。スペインには五輪に向けたスポーツ法があり、各スポーツ協会より参加要請があった場合は、国内クラブは選手を派遣する義務がある。そのためスペインリーグに所属する選手に関しては、デラフエンテ監督が満足いくメンバーを集めることができたと考えられている。

バルセロナやレアル・マドリードなどのトップクラブから集められた一方、海外組の事情は異なる。直近の欧州選手権でA代表に招集されていた五輪世代は他にも複数人いたが、所属クラブの許可が下りなかった。この中でMFファビアン・ルイスはU-21欧州選手権でMVPに輝き、東京五輪出場権を獲得した中心選手だった。

▽戦力 それでも今回、欧州選手権の招集メンバー6人が大会に参加している。注目を浴びているのが18歳ながら欧州選手権で大会最優秀若手選手賞およびベストイレブンに選ばれたバルセロナMFペドリだ。ただ、直近のシーズンで公式戦70試合以上を戦った影響が顕著に出ており、大会を通じてパフォーマンスを発揮できていないと現地メディアからも指摘されている。

▽戦術 A代表と同じ4-3-3の布陣で、同国の伝統であるパスサッカーが貫かれている。初戦でゲームメーカーのOA枠、MFセバージョスをけがで失うも、1試合平均70・2%という圧倒的なボール支配率を武器にゲームをコントロール。しかし1次リーグでは3試合で計61本ものシュートを打ちながら、わずか2得点。決定力不足の懸念がある。

▽日本人選手との関係 RマドリードでMF久保の同僚であるFWアセンシオは、欧州チャンピオンズリーグ2度の優勝を含む12のタイトルを獲得しているビッグネームだ。準々決勝のコートジボワール戦でハットトリックを記録したFWミルは昨季、ウエスカでFW岡崎慎司と同僚だった。

▽展望 約1カ月の準備期間ながら試合を重ねるごとに完成度を高めている。日本は準決勝でボールをもたれる時間が長くなる可能性が高い。しかし、スペインは試合の大部分で堅い守備を構築しているものの、気候の影響による疲労が出て注意力が散漫になり、失点を許す場面がある。日本はニュージーランド戦で見せた我慢や集中力を保って構えれば、活路を見いだせる。(高橋智行通信員)