サッカー元U-23日本代表監督の関塚隆氏(60)が、準決勝のスペイン戦(3日午後8時、埼玉スタジアム)に臨む日本にエールを送った。

12年ロンドン大会でチームを率いて4位。68年メキシコ大会以来の五輪準決勝を経験した関塚氏は、スペインの強さを口にしながらも「力の差はない」と明言。MF堂安律とMF久保建英の攻撃陣に加えて、ロンドン大会の4位を知るDF吉田麻也とDF酒井宏樹の経験にも期待した。

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いよいよ日本が準決勝まできた。1次リーグを安定した試合で突破し、ニュージーランドに苦しみながらも準々決勝も勝ち抜いた。スペインは大会前の強化試合で引き分け(1-1)た相手。簡単な試合にはならないが、何としても勝って決勝に進んでほしい。

スペインには、MFペドリやFWダニ・オルモら先月の欧州選手権で活躍した選手も多い。準決勝でイタリアにPK戦の末に敗れたが、全試合でポゼッションが65%を上回るなど、ボールをつなぎながら相手を崩す強みは相変わらず。一貫したそのスタイルは、五輪代表でも変わらない。

A代表でも活躍するペドリが中心になることは間違いない。大会前の親善試合でも、後半途中から起用されてチームが一変した。つなぎから最後の崩しまで常に攻撃の画を描けている選手で、相手の出方次第で豊富な選択肢も持っている。注意が必要な選手だ。

もちろん、ペドリだけに注意を払うわけにはいかない。それぞれが個の選手の高さをもち、それを遂行するスキルも備えている。ただ、日本も守備はいい。GK谷が高さへの対応を含めて素晴らしいし、吉田を中心としたDF陣も安定している。大崩れすることはないと思っている。

攻撃陣は、堂安と久保のラインの調子がいい。ただし、2人だけではスペインから得点するのは難しいだろう。堂安-久保のラインに、3人目がどう絡んでくるか。1次リーグのフランス戦はFW上田が加わって攻撃が多彩になった。トーナメント戦だけに、得点しなければ勝利はない。3人目の動きがカギを握るし、見どころにもなる。

ロンドン大会では、直前の親善試合でメキシコに勝ち、準決勝で敗れた。親善試合と本番でチームは変わるのは当たり前。大会前のスペインは、参考にならない。そこは、ロンドンを知る吉田と酒井がいるから、心配はしていないが。

もちろん、中2日の試合が続く五輪だけに、コンディショニングはより重要になる。ただ、疲れているのは日本もスペインも同じ。暑さについても、最近は欧州も異常気象で日本が有利になるとは限らない。そこも含めて、厳しい戦いになるのは間違いない。

試合で重要になるのは、試合の入り方と試合中の相手への対応力。スペイン相手にポゼッションを高めることは難しいから、その中で自分たちの時間をつくりながら、より守から攻、攻から守の切り替えが重要になる。今回の五輪代表は強い。スペインに勝って、決勝に進んでくれると思っている。(談)

 

◆12年ロンドン五輪の男子サッカー 日本は1次リーグ初戦で難敵スペインと対戦。FW大津のゴールで1-0で勝つと、続くモロッコにはFW永井の得点で1-0、最終のホンジュラスと0-0で引き分けて1位で突破した。エジプトとの準々決勝は永井、DF吉田、大津のゴールで3-0と快勝し、68年メキシコ大会以来のベスト4進出。メダルをかけた準決勝はメキシコに1-3と逆転負けを喫し、3位決定戦も韓国に0-2で敗れたが、4位の好成績をおさめた。

 

◆関塚隆 1960年(昭35)10月26日、千葉県船橋市生まれ。千葉・八千代高-早大-本田技研とFWとして活躍。91年の引退後は早大監督、鹿島コーチなどを経て2010年からU-23日本代表監督。12年ロンドン五輪4位で退任した後は磐田、千葉監督を歴任し、18年から日本協会技術委員長、ナショナルチーム・ダイレクターを昨年11月末まで務めた。