サッカー男子日本は、6日の3位決定戦でメキシコと対戦する。勝てば68年メキシコ五輪以来、53年ぶりのメダル獲得が決まる。オーバーエージのDF吉田麻也主将(32=サンプドリア)は12年ロンドン五輪で3位決定戦に敗れた苦い思いを五輪世代に伝え、準決勝での敗戦から再び闘志に火を付けた。準々決勝から2試合続けて120分の激闘。メキシコ五輪の3位決定戦で勝利した因縁の相手に、残るすべての力をぶつける。

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スペイン戦の翌4日の夕刻。屋内でのリカバリーを終えた吉田が、ピッチで練習を見守る森保監督のもとへ歩み寄った。「みんなに響いているか、届いているのか、不安になりますね」。苦笑いでそう話しかけた。「いや(自分も)毎回そうだよ」と指揮官も思いを同じくした。

練習前、吉田が発起人となって選手だけのミーティングを開いた。理由は「みんなの表情を見てまずいなと思ったので」。2試合連続で120分を戦い、スペインに敗戦。金メダルへの道を絶たれ、気持ちを切り替えることができていないメンバーがいた。

ミーティングではロンドン五輪の3位決定戦、日韓戦の映像を使用。メダル獲得に歓喜の輪を作るライバルの隣で倒れ込み、うなだれる選手たちの姿をあえて見せた。「(落胆の)気持ちはすごく分かる。でも、もうあの思いはしたくないし、若い選手にしてほしくない」。普段は積極的に発言し、活気づくミーティング。この時、五輪世代は静かに吉田の言葉に耳を傾けるのみだった。

主将の心配は杞憂だった。DF旗手は「(吉田)麻也さんが言ったことすべて心に残っている」と、闘志を燃え上がらせた。FW前田も「下向いてないで上を向こうという気持ちになった」。失意から気持ちをもう1度、奮い立たせた方が勝つ。吉田が伝えたかったことを、後輩たちはしっかりと受け取った。

このチームに残された試合はあと1つ。疲労はとうにピークを過ぎた。「20歳前後で国を背負う、こんなにすごい仕事はない。誇りと責任を全部出し切って終わりたい」。チームの思いを主将が代弁した。53年前、最後にメダルを獲得した時と同じ、因縁の相手。最後は倒れてでも勝つ。【岡崎悠利】