池江璃花子の小学校時代の恩師、清水桂さん(46、東京ドルフィンクラブコーチ)が日刊スポーツに手記を寄せた。

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東京五輪に出たことは大きい。やはりテレビで見るのと、実際にそこにいるのは全然違う。璃花子はテレビで見るほうだと思っていた。まさか、あんなにマッチ棒みたいに細かった彼女が1年半前からやっとプールで泳いで。え、え、え、とシンデレラガールのような感じ。代表をとるとは想像してなかった。でもやっぱり9番で悔しそう。これが現実なので、次につながるレースをしてほしい。

5月に少しだけお祝いをしました。璃花子は来ると「おなかすいたー」と豚汁とご飯をどんどん食べた。おすしもあるのに白いご飯。いきなり食べる姿を見て「体重を増やそう」という意気が出てました。本人はひょうひょう、といつも通り。「いやあー、とっちゃった」という感じ。「4冠はやりすぎだ」というと「あははは」と笑っていた。

7月4日の誕生日は「頑張って」と伝えました。白血病から濃い3年間です。2年前は闘病生活。でも「あの子が白血病だったの?」という感じになりつつある。璃花子も過去の話を出さないから。ネガティブになる言葉は全然出てこない。だからおそらく白血病だったことを忘れさせる選手になる。普通の人はできないし、考えられない。過去にとらわれたくないというポジティブな、前向きな気持ちが行動に現れている。昔からそう。悔しくてもあまり声に出したりしない。「はい、次」「はい、次」と思考が前を向いている。

昔から、リレーが大好きでした。お祭り的なものが好き。チームで盛り上がって、助け合って、気持ちひとつで頑張っていく。リレーでは「えっ」という信じられないタイムを出す。10歳かな。メドレーリレーで決勝に残ってレースが終わったらジュースとアイスをおごってあげると言った。メンバー全員に。それでめちゃくちゃ頑張って、決勝で2位に入った。ジュースとアイスを持って「どっちもとったぞ」という表情で喜んでいました。

五輪は久々の国際大会。結果も求められるけど、とにかくリレーで楽しんできなよと思う。でも自覚はすごくあった。未来を見据えて、自分が引っ張っていかなきゃと使命感を感じた。すごいなと思っていた。

パリ五輪では全力で頑張って欲しいし、活躍してほしいと思う。パリまでに、どの種目でもいいから日本新を出すことで、モチベーションも変わってくる。今はそこまで望んではいません。ただパリで本格的にメダルを目指すのであれば、そこを見てみたいです。