世界ランキング2位の伊藤美誠(20=スターツ)が、シングルスでは日本女子初のメダルとなる、銅メダルを獲得した。4-1でユ・モンユ(シンガポール)に快勝。12年ロンドン五輪で石川佳純、16年リオデジャネイロ五輪で福原愛と、直近2大会連続で敗れていた鬼門の3位決定戦を逆転で制した。伊藤は前回大会の女子団体銅メダル、水谷隼と組んだ今大会の混合ダブルス金メダルに次ぐ、3つ目の五輪メダル獲得となった。

試合後のインタビュー中には、うれし涙ではなく、悔し涙を浮かべた。開口一番「勝ったことはうれしいですけど、正直、悔しい気持ちの方が大きいかなと思います」と語った。「その涙は悔し涙ですか」と問われると「はい、悔し涙です」と、はっきりと語った。銅メダルという結果に不満なわけではなく、一見すると快勝の試合内容に、納得がいかない様子。目指す場所が高いことを示すと同時に、残る団体での金メダル獲得を予感させた。

この日正午すぎに行われた準決勝では、世界3位の孫穎莎(中国)に0-4と、ストレート負けを喫した。試合後には、目に涙をためて「これが実力。すごく悔しいけど気持ちを切り替えて次の試合に臨みたい」と、気丈に話していた。同時に、メダル獲得への意志の強さをにじませていた。

それでも、迎えた3位決定戦の第1ゲームは、気合が空回りした。ラリーから返球が浮いて先制点を許すと、持ち前のフォアの強打が決まらなかった。6-6からは5連続失点。6-11で、ほしかった最初のゲームを落とした。

それでも焦らず、得点するたびに大声をあげる相手とは対照的に、第2ゲームは冷静にプレーした。一進一退の展開で、8-8の同点から2球目を強打、9-8と1点リードからはチキータで相手サーブを撃破。ゲームポイントを迎えると、徐々にさえてきたサーブで得点を奪い、11-8と1ゲームを返した。

第3ゲームは、鮮やかに逆転した。5-7と2点ビハインドから6連続得点を奪った。相手サーブからの2球目を、バックハンドの強打で決めて8点目を決めて逆転。9点目を奪って突き放すと、ようやく声をあげて左手を握り締めた。11-7で奪い、気持ちも乗ってきた。

第4ゲームは序盤から戦略と強打がさえた。3-1から相手を左右に振り、4、5点目は、ラケットに触れることすら許さなかった。追い上げられて8-7となると、自らタイムアウトを取り、相手に傾きかけた流れを断ち切った。タイムアウト直後から3連続得点で11-7とし、王手をかけた。

第5ゲームも流れを渡さず、序盤からリードを奪った。4-2から相手はたまらずタイムアウト。だが流れを変えないどころか、タイムアウト明けから3連続得点。むしろ、伊藤の勢いが加速した。相手に付け入る隙を与えないまま、このゲームを11-7。メダル獲得の瞬間も、引き締め続けていた表情は崩れなかった。日本女子卓球史上初の五輪メダルにも、冷静な振る舞いを見せた。