大坂が負けた。報道陣の対応は二転三転し、最後は、涙が止まらなかった。母国で五輪に参加し、金メダルを取るのが子どもの頃からの夢だった世界2位の大坂なおみ(23=日清食品)が、同42位のボンドロウソバ(チェコ)に1-6、4-6のストレートで敗れた。

言葉にならなかった。赤いマスクに、ヘッドホン。隠れていない目からは、涙の筋が何本もできた。「ここ(五輪)に参加できたことは本当にうれしかった」。開会式では、全世界のテニス選手史上初めて、聖火の最終点火者となった。「本当に五輪に出たことは名誉なこと」と、目を潤ませた。

「とても残念だった?」の問いには、首を縦に振るのが精いっぱい。それ以上、言葉を出せなかった。無言で流れ続ける涙を耐え、目を見開きながら、ずっと報道陣を見つめた。それが、大坂の五輪最後の姿だった。

試合直後は、報道陣対応通路のミックスゾーンを通らず、脇を抜け、すぐに完全に会場を去った。すでに帰りの車に乗って、途中まで行っていたが、土橋登志久日本代表監督が、チームに電話。すぐに戻るように説得を試みた。

土橋監督によると「負けて、ミックス(報道陣対応エリア)を通ることを知らなかったと、本人は言っていた」。会場に戻り、ミックスゾーンを通り、何とか報道陣に対応した。

大会の規則では、ミックスゾーンを通ることだけが義務づけられている。通らないと、最大2万ドル(約220万円)の罰金を科される。しかし、ミックスゾーンで、報道陣の呼びかけに対応するのは義務ではなく、対応しなくてもいい規則になっている。