1964年(昭39)の東京五輪で最終聖火ランナーを務めた坂井義則さん(2014年死去)の「控え」だった落合三泰さん(74)が21日、東京・しながわ中央公園で聖火をつないだ。「57年間の思いがひとつ達成できたという喜びもありますが、悔しい部分もあります。うれしさ、悔しさ、50-50でしょうか」と思いを明かした。

57年前、坂井さんに万が一があったときに備え、国立競技場のマラソンゲートで待機していたのが落合さんだった。聖火を受け継いだ坂井さんの後ろを走り、スタジアムに無事入るのを見届けると、スタンド下で、坂井さんが182段の階段を駆け上がり、聖火台に火をともすのを見守った。

2020年大会の東京開催が決まった13年、坂井さんがラジオで「できることがあったらお手伝いしたい」と語るのを落合さんは耳にした。「前回の東京大会の感動、歓喜を次の世代に届けたいというメッセージだと思いました。坂井さんが亡くなって、代わりを務められるとしたら『控え』だった自分じゃないのかな」と聖火走者に応募した。

公道を走り、最終走者に聖火をつなぐ役目ができたらと夢見た。しかし、走ることもかなわなかった。「また幻のランナーかと思いました」。コロナが招いた異例の五輪。「仕方ないと納得させるしかないんだな」と落合さんは話した。【中嶋文明】