テレビ朝日の吉野真治アナウンサー(39)は、14年ブラジル大会に続きロシア大会でも実況を担当する。

 高校時代はFC町田ユースでプレーし、元日本代表FW永井雄一郎とクラブユースの東京都選抜で2トップを組んだ経験を持つ。4年前、アナウンサーとして“初出場”したワールドカップ(W杯)の実況席で、解説者のセルジオ越後氏から課せられた「宿題」。それを探す旅は今も道半ばにある。

 14年6月24日、日本対コロンビアを担当した。メンバーを落とした相手に1-4で惨敗し、ピッチリポーターの名波浩氏(現磐田監督)は「1・5軍のコロンビアに負けた。この事実を重く受け止めないといけない」と締めくくった。中継が終わると、大役を終えた安堵(あんど)感にひたる間もなく、隣にいたセルジオ氏からこう言われた。

 「何で吉野はいいことばかり言うの? 悪いプレーは悪いと言うのが日本代表のためになるんじゃないの? ロシアまでの宿題だよ」

 吉野アナは11年アジア杯のシリア戦で日本代表戦の実況デビュー。6勝2分けと不敗を続けていたが、コロンビア戦で初めて実況席で日本の敗戦を味わった。

 吉野アナ 多くの方に見てもらいたいだけに、応援してもらいたい、になるんですよね。その中で、どこまで試合の本質を伝えるべきなのか。勝った実況はだれでもできるんです。そうでない試合の時に、いかに視聴者に関心を持って伝えることができるか。人生をかけての大きな宿題をもらいました。

 ロシア切符をつかむためのアジア最終予選では、黒星スタートとなったUAE戦など5試合を担当。以降「応援モードな中の冷静」を意識し、パスが引っかかるなど悪い部分を感じれば、隣の解説者に「この良くない理由はなぜ起きているのか」を積極的に尋ねることを心がけた。吉野アナは「以前は悪いプレーで言わないわけではなかったけど、そこを突くことが難しかった。選手をリスペクトした上で、解説者に分析してもらう方法がある。その原因を視聴者に分かりやすく持っていくかを意識するようになりました」と言う。

 テレ朝は今大会、02年日韓大会以降で初めて日本戦のないW杯になる。吉野アナは「世界最大の競技人口を誇るフットボールの魅力、サッカーの本質を伝えられる機会。テレビ朝日のサッカー中継が試されるチャンス」ととらえている。そして、テレ朝の放送席を「全局の中で一番闘っている放送席」と自負する。PK戦までもつれた11年のアジア杯準決勝の日韓戦。最後のPK戦は吉野アナ、解説者のセルジオ氏、松木安太郎氏が手をつなぎ、ピッチの選手とともに闘った。

 ロシア大会での吉野アナの実況カードは未定だが「日本戦でなくてもピッチの選手と一緒に闘う気持ちを持ち、世界最高峰のプレーに食いつく臨場感を大事にしたい。準決勝、3位決定戦はぜひ見てほしい」。

 また巡ってきた4年に1度のひのき舞台。選手だけでなく、実況者も人生をかけて臨む。【岩田千代巳】(おわり)

テレビ朝日の放送
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