9月17日のホーム浦和戦。ドイツ3部のカールスルーエから約3年ぶりに古巣ジュビロ磐田に復帰したMF山田大記(28)が、加入後初出場を果たした。

 1-1の後半39分、MF中村俊輔(39)に代わってピッチに立つと、2万3783人が詰めかけたエコパスタジアムは拍手に包まれた。サポーターの新チャント(応援歌)にも背中を押され、同41分には右足ミドル。6分間という短い時間の中で果敢に勝ち越し点を狙ったが、同点のまま試合終了の笛が鳴った。

 試合後、山田は「新しいチャントで出迎えてくれたり、すごくうれしかった。名波監督も、同点の場面で合流から間もない自分を起用してくれた。だからこそ、結果で返したかった」。その表情には、新たな1歩を踏み出した喜びよりも、悔しさがにじんでいた。

 覚悟を持って復帰したからだろう。3年前の夏。山田は下部組織で10年、プロで3年半を過ごしたクラブが、J1昇格を目指す最中に海外移籍を決断した。今回の復帰でも、山田が国内外で新天地を模索する中、クラブ側は本人の意思が固まるまで返答を待った経緯があった。

 だからこそ、加入会見でも山田は「出て行く時、チームが厳しい状況の中で悩みながらも欧州への憧れや夢を優先した。3年間やって、大きな成功を収められた訳でもない。クラブに迷惑をかけたにも関わらず、また温かく迎えてくれた。プレーで恩返しがしたい」と決意を口にしていた。

 23日のホーム大宮戦でも後半34分から途中出場。本拠地ヤマハスタジアムへの復帰も果たした。ただ、当然のように満足感はない。山田は「ここから出場時間を増やして自分の良さを出していきたいし、準備もできている。自分に与えられた要求に応えながら、それを(要求)を上回るようなプレーをしていきたい」と言った。残り7試合。サックスブルーのユニホームを着て、躍動する背番号「19」の姿を期待している。【前田和哉】


 ◆前田和哉(まえだ・かずや)1982年(昭57)8月16日、静岡市生まれ。小2からサッカーを始め、高校は清水商(現清水桜が丘)に所属。10年入社。昨年までは高校サッカーを取材し、今年から磐田担当。