実質国内5部にあたる関西リーグ1部FCティアモ枚方が3日、大阪・枚方市内で新加入会見を開いた。今季の目標はJFL昇格。その本気度の表れが大型補強だ。元日本代表FW野沢拓也(37)やMF二川孝広(38)、元神戸MF田中英雄(36)ら元Jリーガー8人を含む12人が入団。日本代表経験ある野沢らが、今季のチームスローガンでもある「覚悟」を示した。

鹿島の下部組織で育ち、高3でプロデビューを果たした野沢。J1通算384試合70得点で、06年には日本代表にも選出された。鹿島、神戸、仙台で結果を残し、18年オーストラリア2部ウーロンゴンへ移籍。そして今季から日本へ戻ってきた。

今まで国内ではJ1の経験しかなかった。「地域リーグは未知の世界なので、自分の方が分からない。経験を注入し、分からないことを共有して1つひとつ、クリアにしていきたい」。それでも未知の世界に覚悟を持って飛び込んだのにはワケがある。

「オーストラリアを経験して、半年くらい模索した。その時、お声を掛けて頂いて。Jリーグに帰ろうという気はなかった。まだやれる自信はあったけど…。何年かかるか分からないけど、このクラブがJリーグに入ったらドラマみたいじゃないですか?」

練習場を転々とすることは当たり前。だが、ウーロンゴンでも環境が悪く「J1から直接地域リーグに来たら、また違った見方になっていたかもしれないけど、オーストラリアでいい経験をした。とにかく今はサッカーを楽しめる」という。刺激を与えられる毎日。ただ純粋にサッカーが好き-。ティアモの仲間と出会い「みんな目がギラギラしている。僕も初心に戻れる」と大切な気持ちに気付かされた。

このクラブに入り、野沢自身も変わった。J1時代はいわゆる天才型。積極的に人と話すタイプではなかった。だが、ティアモでは子どもの指導にも参加。練習メニューを考え、経験を伝えている。「Jを離れて、子どもたちを見て伝えたかった。子どもたちの顔を見ると、1人でも多くプロに上げたいなと思う」。指導する上で情報交換も進んで行う。「今までそんなことしなかった。自分を変えてくれた。今こうやって話しているのも!(笑い)」と明るい表情を見せた。

それを見て、ふと思い出した。FCティアモ枚方は、G大阪や鹿島で活躍した新井場徹氏がオーナーのクラブ。14年11月、当時入社1年目でサッカー担当に配属された私はC大阪を受け持った。新井場氏は現役だったが、この年限りで引退。名刺を出した時に受けた言葉は忘れられない。

「これまでいろんな記者を見てきた。お前は自分を信じて自分だけができることをやれよ。みんなと違う視点を持って、人が聞かないようなことを聞いて、誰も行かない時に取材して。そういうの見てるから」

今でも大切にしている言葉。野沢の「このクラブがJリーグに入ったらドラマみたいじゃないですか?」とワクワクしている姿を見て、新井場スピリッツを感じた。野沢が自身を信じて進む道。ティアモの未来も、野沢の未来もきっとここから開けていくはずだ。【小杉舞】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)


◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大阪教育大を卒業し、14年に大阪本社に入社。1年目の同11月から西日本サッカー担当。W杯ロシア大会、アジア杯UAE大会を現地で取材。担当クラブはG大阪や名古屋、J2京都など。