「髪をピンク色に染めたのは、ドラマで横浜流星がしていたのに影響されたんです」。こう気さくに話してくれたのは、セレッソ大阪の田中亜土夢(31)だ。

令和2日目の5月2日。1日付で報道部に配属された私の記者としてのキャリアも2日目。初めてのC大阪の取材だった。何を質問しようかと考えていたのだが、真剣勝負の世界で生きているプロ選手が、こうも簡単に答えてくれるとは思いもしなかった。

C大阪は現在、リーグ戦で3試合連続無得点。決定力不足解消が喫緊の課題となっている。そんな中、田中は先月24日に行われたルヴァン杯ヴィッセル神戸戦でゴールを奪った。

田中は新潟県出身でアルビレックス新潟で力を磨いた後、HJKヘルシンキ(フィンランド)に移籍。2年前からC大阪に所属している。

4月から地元を離れ、大阪で勤務している記者は、参考にすべく、フィンランド流のコミュニケーションの取り方を尋ねると、「フィンランド人はシャイで日本人に似ていますよ」と語り、「チームでも年齢関係なく何でも受け入れるようにしている」。ナチュラルにコミュニケーションを取れる人柄がうらやましい。

C大阪のサポーターも彼に好意的だ。練習後、クラブハウスへの通り道。ズラッと並んだサポーターひとりひとりにサインをし、ともに撮影にも応じた。

「大阪は僕は好きです。外食すると、隣の人ともしゃべっている。距離が近いですね」

そんな田中が、最近特に意識している練習はシュート練習だという。

「もともと、チャンスメークの意識が高かったが、フィンランドで得点の意識が高くなった。日本に帰ってからは昔のスタイルに戻ったが、最近またゴールを意識するようになった」

練習後の疲れも見せずに、話を続けてくれた。日々、自らにノルマを課し、シュート練習を行う。

「昔は思いっきりシュートを打つことばかりしていたが、それではモーションが大きくなってキーパーも反応しやすい。インサイドキックだと、タイミングをずらせる。試合になると思いっきりシュートしてしまうんですけど」と照れながら話した。

そうしたなかで生まれたゴールが、神戸戦の1得点だった。地元を離れ、外国に行き、大阪でも活躍している彼を見ていると、準備を怠らなかったプロだけがたどり着ける結果だと感じた。

最近、髪のピンク色が抜けて金髪になってきたそうで「また染めようと思います。ピンク色が抜けてきたときが調子がいいみたいなので」。冗談交じりに言う。「プロの顔」と、冗談を言う「人懐っこい顔」の両面が見事に調和している。彼を見ていると自分もがんばろうと素直に思えた。【南谷竜則】

C大阪対神戸 前半、先制ゴールを決めピッチを駆けるC大阪MF田中(右)(2019年4月24日撮影)
C大阪対神戸 前半、先制ゴールを決めピッチを駆けるC大阪MF田中(右)(2019年4月24日撮影)