20年東京五輪、日本サッカー悲願のメダルへのキーワードは「ラージ(大きな枠)」と「発掘」-。欧州遠征中の日本代表を筆頭に、年代別も含めた男子代表強化を担う日本協会理事の西野朗技術委員長(62)が、自国開催の東京五輪を戦う森保ジャパン強化プランに言及した。就任間もない森保一監督(49)とも対話を重ね、3年後の悲願のメダル獲得へ動きだしている。

 

 

 欧州遠征中のハリルジャパンに同行している西野委員長は、来年のW杯ロシア大会と同時に、20年東京五輪も見すえている。自ら招聘(しょうへい)に動いた森保監督のもと、自国開催の地の利も生かし、68年メキシコ五輪の銅メダル以来、52年ぶりの悲願メダルを狙う。

 ただ、道のりは険しい。東京五輪世代で臨んだU-20(20歳以下)W杯韓国大会で、日本は16強止まり。優勝候補とも呼ばれたその下、U-17W杯インド大会も同じ16強。大会に同行した西野氏は世界との差を痛感したという。

 「(決勝)トーナメント入ってから違う景色がいきなりくる。ベスト16を超えた世界は、また違う。(現時点で日本が)通用するのはここまで。技術も組織力も、すべて出し切って、やれているんだけど、正直そこを越えられない。まだ差がある。そこを越えないとメダルには届かない」

 代表強化の責任者として日本協会入りし、1年半が経過。「世界基準」を合言葉に視察を続け、気付いたことを実行に移す。ここ数年の年代別代表は、驚異的な頻度で海外遠征を重ねてきた。海外で戦うことに慣れたが、一方でメンバーの固定化が進み、国内合宿でじっくり土台を積み上げる作業が、おろそかになった面もある。

 「(日常から)世界基準を常に持たせてという指導が大事。代表を編成していく中で、コアな選手(=中心選手)を固定して動き過ぎた。いろんな発掘をもっとしていかないと。当然、継続の強化はあるが、あまりにも同じ編成ではどうか。気がついたら(所属クラブの活動も含め、代表の主力は)年間、ものすごい試合数になる。休みがまったくない中でバーンアウト(燃え尽き)状態になる」

 森保ジャパンは12月に始動し、来年1月の公式戦、アジアU-23選手権(中国)から本格始動する。18年は秋をクラブ専念期間にする案も。「(ルヴァン杯が終盤を迎える)9、10、11は自クラブで強化を。あの世代はクラブであえてということを考えている。(その後)年末に集められたら、12月。そのあたりで」。所属クラブの真剣勝負、公式戦で力を蓄え、12月に代表活動をじっくり行うプランを描く。

 海外遠征偏重だった活動も見直す。合言葉は「ラージ(大きな枠)」と「発掘」だ。「1回、外(海外に)行くよりラージで(候補を)膨らませて、国内キャンプを増やしていくことも考えている。特に若い世代は、今後そういう発掘の方を。代表チームと地域トレセンの横のつながり、トレセンからの引き上げも」。固定化されていたエリートメンバーだけではなく、日本協会の強みでもある育成制度、トレセンとも連係し、もっと重視する。

 「ラージ」で裾野を広げ、より大きな候補の枠から、従来の発想になかった逸材の発掘に着手する。その上で、12月と1月、森保ジャパンには従来と違う発想も求める。「12月のタイ、1月のアジア選手権(両方に招集など)強引なセレクトはしない。この2つの大会は有効に、ラージ(候補の大枠)を見られる。“負けの勇気”をしっかり持って」。強化のトップ、J1最多勝の記録を持つ名将が容認する“負けの勇気”。つまり、積極的なトライでの失敗はOK。力強い後押しを受け、森保ジャパンは12月のタイの国際大会から船出する。【八反誠】