帝京長岡(新潟)が、旭川実(北海道)との大会史上最長となるPK戦の激闘を制し、3回戦に駒を進めた。1人ずつ失敗しての5人では決着がつかず、サドンデスへ。その後も決着がつかず2巡目の19人目でGK猪越優惟(いのこし・ゆうい、2年)が止めて17-16。のべ38人が蹴り、互いに1人ずつ足がつる「壮絶PK戦」の末、公式戦初のPK戦だった2年生守護神が、チームに選手権初のPK戦勝利をもたらした。

2年生、17歳には最高の初体験となった。亥(い)年の初戦に、帝京長岡GK猪越が歴史的勝利の立役者になった。「次またPK戦になっても止められる自信があります」。試合後も興奮が冷めなかった。

最初の1人目を止めた。「結構、いけると思った」。6人目からは隙を見せた方が負けだった。「集中力だけは切らさないようにしていた」。高校公式戦でPK戦は初だったが「楽しもうと思った」。互いに譲らない展開で11人目へ。自らもキッカーとなったが冷静に真ん中に決めた。2巡目となり13人目の前に旭川実が「給水タイム」を要求して、少し間があいた。「なんか、味方が失敗しそうな嫌な感じがしたので(心の)準備をしていた」。その通り仲間が失敗したが、直後のPKを止めた。「絶対に止めてやると思った」と準備していた通りに手ではじいた。

最後19人目は「余計なことは考えず、斜め前に跳ぶこと、下からいくこと、それだけに絞っていた」と冷静な判断で歴史的な激戦のヒーローに。「傾向として右足では左方向へ、左足では右方向が流れのように思った」。止めた3本はすべてその通り。2年生とは思えない分析力だった。

過去、選手権では4度のPK戦すべて敗戦。古沢監督も「もう特に練習しない方がいいと思って調整してきただけ。初めてスタッフ全員で肩を組んだ。GKがヒーローですね」。途中2人がPKを決めた後に足がつるアクシデント。旭川実FW谷口は担架で運ばれた。壮絶な戦い。集中力が保てた帝京長岡が勝利したが、その差はほんのわずかだった。【浦田由紀夫】