新たな時代の号砲を横浜F・マリノスFW仲川輝人(26)が鳴らした。

新元号が令和となって最初のJ1が行われ、仲川が広島戦の前半34分に左足で得点した。平成最後の開催となった4月28日の鹿島戦(日産ス)でも得点した「ハマのスピードスター」が、その異名通りの一番乗り。チームを1-0の勝利に導き、新時代の幕開けを飾った。試合終了の笛の音がピッチに響く。途中交代していた仲川はベンチからチームカラー青、赤、白の「トリコロール」の傘で埋まったスタンドに向けて、何度も両手を突き上げた。

「狙っていました」というJ1令和初ゴールは前半34分だった。中央から左サイド寄りに走り、FWマルコス・ジュニオールのスルーパスを引き出した。完全に抜け出すと、とび出したGK大迫をかわし、左足で角度のないところからシュート。ゴール前へ戻ったDF佐々木に当てながらも、力でねじ込んだ。「前日に考えた」と、新元号の「令」の字を体で表現するゴールパフォーマンスを披露し、笑顔を見せた。

身長161センチと小柄だが、最大の武器が緩急をつけたプレー。相手選手の間にスルスルと入った瞬間に急加速し、DFを置き去りにした時点で勝負はあった。「ああいう動きはDFにとっては嫌ですし、(定位置の)サイドだけじゃなく、中央にも絡めるように意識している」。その持ち味が凝縮された1発だった。

振り返れば、平成は苦難の時代だった。「大学ナンバーワン」とうたわれた専大4年時の14年10月、右膝前十字靱帯(じんたい)と内側側副靱帯(じんたい)を断裂、同時に右膝半月板を損傷する大けが。選手生命も危ぶまれた。約10カ月のリハビリに耐えて新天地での貢献を誓うも、はじめはリーグ戦で出場機会を勝ち取れず。2度の期限付き移籍。“武者修行”の末、4年目の昨季ようやく主力の座を勝ち取った。「苦しい思いをしたけど、それが今の自分を動かしている。この気持ちを忘れずにいいパフォーマンスを続けたい」。逆境があったからこそ、平成はかけがえのないものになった。

これで勝ち点を18に伸ばし、暫定ながら4位へと浮上した。「勝利がなによりうれしい。これを続けて、優勝を狙える位置までいかないといけない」とチームのけん引役する責任感も口にした。新時代は名前の通り「輝く人」となってみせる-。令和初ゴールは、飛躍を誓う1発となった。【岡崎悠利】