【リヤド9日=木下淳】サウジアラビア遠征中の浦和レッズが、9日午後7時30分(日本時間深夜1時30分)からアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝第1戦でアルヒラルと対戦する。会場はサウード国王大学スタジアム。優勝した2年前と同じ顔合わせとなり、前回はアウェーの第1戦で1-1、ホームの第2戦で1-0と勝ち切って計2-1で浦和が頂点に立っている。

リベンジに燃えるアルヒラルの現在は-。準優勝に終わった17年大会以降に大型補強を敢行し、迫力を増していた。最前線には元フランス代表FWバフェティンビ・ゴミス。今大会最多の10得点を挙げており、浦和FW興梠の8得点を上回る。

セネガルにルーツを持つ184センチのセンターフォワードで、フランス代表では13試合2得点。リーグ戦ではコンスタントに結果を出している。フランス1部リーグアンでは8年連続2桁得点。イングランド・プレミアリーグ挑戦を挟んで16-17年シーズンにもマルセイユで32試合20得点と暴れた。

翌シーズンはトルコ1部ガラタサライで33試合29得点。昨季からアルヒラルに所属し、1年目は26試合19得点、今季はここまで9試合6得点の成績を残している。サンテティエンヌ時代に松井大輔、マルセイユで酒井宏樹、ガラタサライ所属時に長友佑都とプレーしており、日本人の特徴に一定以上の理解がある点も脅威といえる。

アジア・サッカー連盟(AFC)公式サイトのインタビューでは「アジアの頂点が唯一のターゲット。アルヒラルは中東のレアル・マドリードだ」と銀河系軍団に例えて自信をあふれされている。

エースがそう話したように、中盤でプレーする司令塔には元イタリア代表FWセバスティアン・ジョビンコ(32)がいる。セリエAのユベントスやパルマで活躍、代表では13年コンフェデレーションズ杯の日本戦で決勝ゴールも決めた。MF長沢が「クリエーティブな選手」と最も警戒しているファンタジスタだ。

ほかにも、右サイドにペルーの現役代表MFアンドレ・カリージョ(28)。昨年のW杯ロシア大会や準優勝した今年の南米選手権に出場し、南米決勝のブラジル戦にも先発している。一方の守備では元韓国代表DFチャン・ヒョンスが中央を固める。今夏までJ1FC東京に所属していたセンターバックで、東京時代には長谷川健太監督から主将に指名されるなどJリーグの中でもトップ級の存在感を示していた。

自国のサウジアラビア人も強力。GKムアイオフやDFシャハラニは、17年9月のW杯ロシア大会アジア最終予選の最終節で日本に1-0で勝った代表メンバーだった。日本は前節にロシア切符をつかんでいただめ消化試合も、本田圭佑らが先発した酷暑のジッダの夜に力負けしている。

この選手たちを率いるのがラズヴァン・ルチェスク監督(50)だ。元ルーマニア代表の名選手ミルチェア・ルチェスク氏(74)の息子。ルーマニア代表やトルコ代表、クラブはインテルミラノなどで指揮した偉大な父と同じ指導者になり、自身も09~11年にルーマニア代表監督。親子2代で同国の指揮官の頂点に立ったサラブレッドが、今季からアルヒラルで采配する。

就任1年目で、サウジアラビアの名門を再びアジアの決勝に導いた。今回のACL準決勝では元スペイン代表シャビ監督のアルサド(カタール)を第1戦(アウェー)4-1、第2戦(ホーム)2-4の壮絶な打ち合いの末、下した。

浦和との再戦へ、8日の公式会見に登場したルチェスク監督は「この場所に再び来ることができてうれしい。我々は非常にモチベーションが高く自信に満ちあふれている」と充実感をにじませ「今季はアジア、アジア、アジアと自分自身に言い聞かせてきた。トロフィーを絶対に奪い取りたい」と力を込めた。

前身アジアクラブ選手権では2度の優勝を誇るも、現行のACLでは14年と17年に決勝で敗れている。悲願成就へ「我々はシーズンが始まる前からACLをメーンターゲットと決めていた」。同席したムアイオフも「過去2回、決勝で負けてしまった。負けた理由はいつも同じではない」と切り替えて浦和を見据え、まずホームで迎える第1戦へ「浦和は最近3つのゴールがミドルシュート。DFとしっかり連係し、外からでも中からでも攻撃を防げるように対処する。絶対に守ってみせたい」と闘志を燃やしていた。

この難敵を、いかに敵地で抑えて24日のホーム第2戦(19時、埼玉スタジアム)につなげられるか。2年ぶり単独最多3度目のアジア王者へ、これ以上ない相手かもしれない。公式会見で「ぜひチャンピオンになりたいと強く思っている」と言った大槻監督の分析と采配、エース興梠やACL初出場が決勝というGK福島春ら選手の奮闘のゆくえが今日深夜、注目される。