ジュビロ磐田はアウェーで北海道コンサドーレ札幌を下し、残留に望みをつないだ。1-1の後半ロスタイム。大卒4年目のMF荒木大吾(25)が、J1初ゴールとなるPKを決めて決勝点。土壇場の一撃で、負ければ来季J2降格が決まった一戦を乗り切った。

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後半のアディショナルタイムは5分。それを上回る7分が経過した時、磐田に奇跡が起きた。MF荒木が倒され、PKを獲得。キッカーに志願すると、プレッシャーを打ち消すように深呼吸を繰り返した。「相手に話し掛けられもしたけど、自分のリズムで蹴ることに集中した」。仕掛けられた心理戦にも、ボールを2度セットし直して対応。冷静に右足で狙った。

ゴール中央へ蹴ったボールは、GKの足に当たった後、ネット上方へ跳ね上がった。「PKだろうと、相手の足に当たろうと、1点は1点。入って良かった」。大卒4年目は歓喜の輪に飛び込んだ。出場49試合目で訪れた待望のJ1初ゴールが、チームを救った。

1-0の後半43分、CKから同点弾を献上した。痛すぎる失点。それでも、荒木の目に映ったのは、顔を上げるMF宮崎智彦(33)らの姿だった。「残留には勝つしかない。自分もやるしかないと思えた」。ちょうど4年前の2015年11月23日。J2最終節の大分戦で、チームは後半45分に同点弾を許しながらも同ロスタイムに決勝点を挙げ、J1復帰を決めた。この“奇跡の勝利”を知るベテランの姿勢が、ミラクルを呼び込んだ。

残り2試合。16位湘南との勝ち点差は「4」に縮まったが、次節のホーム名古屋戦では、引き分け以下で来季のJ2降格が決まる。崖っぷちの状況が続くが、荒木は「残り2試合。決勝のつもりでやる」と決意。宮崎も「諦めなければ奇跡は起こる。勝つことだけを考えてやる」と言った。

奇跡のJ1残留。磐田が、その可能性を残して静岡に戻る。【前田和哉】

◆J1残留争い 引き分けて勝ち点36とした14位鳥栖と15位清水はJ2自動降格圏となる17位の松本との勝ち点差を6に広げた。この日試合のなかった13位浦和とともにJ2自動降格は回避した。12月7日の最終節で湘南と松本の直接対決があり、どちらか一方が勝ち点36に届かないため。松本は次節にも17位以下が決まる可能性があり、勝ち点32で16位の湘南が勝利し、松本が引き分け以下の場合、磐田とともに松本のJ2降格が決まる。それ以外の場合は最終節で湘南と松本が生き残りを懸けて直接対決する。16位がJ1参入プレーオフに回ることになるが、鳥栖と清水も最終節で直接対決を残しており、ともに勝ち点1を分け合えばJ1残留という状況も考えられる。