「岡田メソッド」も注入された今治東中教校(愛媛)が初出場初勝利を飾った。FC今治の岡田武史オーナー(63)が応援席から見守る中、前後半に1点ずつ奪って山形中央を2-0で破った。岡田氏が地域全体で強くなろうと提唱する「今治モデル」の一環としてコーチを派遣されるなど、一体となった強化で交流を図ってきた。谷謙吾監督(52)の下、今治サッカー界の取り組みが1つ実を結んだ。

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この瞬間を待っていた。勝利を告げるホイッスルに、谷監督も、選手も、ユニホームと同じ桃色の上着をまとった歓喜の大応援団も、一斉に沸き立った。観客席の岡田氏もFC今治の小野剛前監督、ラモス瑠偉氏らとハイタッチを繰り返す。指揮官は「スタンド(の岡田氏)からプレッシャー感じました」と笑いつつ「初めてで失点0でいけたのは選手がよく頑張ったから。『ああ、こいつら頑張っているな』とお父さんみたいな感覚で試合を見ていました」とほおを緩めた。

14年11月、岡田氏がFC今治に来た時に種がまかれた。地元の未来を考え、ユースは設立せず「少年団と中学校と高校と全部で1つのピラミッドを作ろう」と「今治モデル」を提唱した。中でも大事にした言葉は「守破離(しゅはり)」。「守」るべき原理原則を体得し、教えの殻を「破」って実行し、最終的には意識から「離」れて自由にプレーする。育成年代で「守」を会得させるべく市内の高校に週1回程度のコーチ派遣、練習参加や試合観戦などを継続。岡田氏も2度、実践的な守備を指導した。

基礎の根は着実に張り巡らされた。県決勝前の練習試合では、今年誕生したFC今治ユースが仮想新田役に。地元の熱も今治東を後押した。岡田氏は「谷さんが自分の力で作ってこられたチーム。ちょっと勘違いしないでほしいなと思います」と念押ししたが、練習参加時にDF駒野やMF橋本ら元日本代表の行動や言葉に感銘を受けたDF大谷主将は「感謝しかない」。谷監督も「今治モデルは大きなポイント。ありがたい環境を作っていただいている」とうなずいた。

今日は静岡学園との3回戦。谷監督は「FC今治と一緒に今治のサッカーが盛り上がる状況になるよう頑張りたい。その1つが選手権。1つでも多く前進していければ」と締めた。今治サッカー史を、結束して作っていく。【浜本卓也】