帝京長岡(新潟)の「高校日本一」への挑戦は終わった。V2を狙う王者・青森山田に1-2で敗れ、県勢最高成績の4強で進撃は止まった。ゲームを終始、主導し、シュートは相手の3倍近い17本。0-2で迎えた後半32分にMF田中克幸(3年)が切れのいいドリブルでディフェンスの間を縫って左足シュート。1点を返し、その後も押し込んだが、複数得点を奪えず、あと1歩及ばなかった。

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試合終了を告げる長い笛が鳴った。緑色のユニホームに身を包んだ帝京長岡の選手たちが緑の芝生に崩れ落ちた。うつぶせになって、勝利を落としたピッチに涙を落としたFW晴山岬(3年)を、青森山田のDF箱崎拓(3年)がそっと手を添え、立ち上がらせる。ゲームは持ち前のテクニックを駆使してボールを保持し続けた。シュート17本に対して相手は約3分の1の6本。CKも相手の2本に対して10本。得意の連係で攻撃姿勢を最後まで崩さなかったが、負けた。念願の高校日本一は消えた。

今大会ここまで無失点のチームが一瞬のエアポケットに入ったように前半16分と後半2分にゴールを割られた。晴山は「自分たちのサッカーが準決勝の舞台で出せた。1人1人が最後の試合にふさわしいプレーができた」と話したが、勝利には結びつかなかった。主将のMF谷内田哲平(3年)は言う。「結果が出なかったのは何かが足りなかった」。

帝京長岡はJクラブ入りする3年生3人を含む最強集団だった。晴山がJ2町田、谷内田はJ2京都、そしてDF吉田晴稀(3年)はJ2愛媛に入団する。3人とも地元の長岡ジュニアユース(JY)FC育ち。一貫指導で緻密なパス能力を培ってきた。ドリブルでスライディングを2度かいくぐって得点を決めた田中は、その「帝長スタイル」に魅力を感じて岡山県から希望して入学。外部の血も取り込んで県勢初の4強入りを決めていた。谷内田と田中は「緑の血(ユニホームの色)が流れている」と同じ言葉で自分たちを評した。

目標にしてきた高校日本一は持ち越しとなった。古沢徹監督(34)は「やり残したことは勝てなかったこと。あと2日(決勝の13日まで)、このメンバーと一緒にいたかった」と話した。埼玉スタジアムのピッチに最強の3年生が落とした涙は、帝京長岡の1、2年生が次回大会以降、拾いに来る。【涌井幹雄】