ベガルタ仙台のユース出身1年目、GK小畑裕馬(18)がJ1のキーパー史に名前を刻んだ。

史上3番目の年少記録18歳7カ月27日でプロデビュー。高卒で活躍した元日本代表の川口能活、楢崎正剛らレジェンドGKに肩を並べ、初公式戦をフル出場の完封勝利で飾った。チームは約4カ月ぶりに再開した無観客試合で、湘南ベルマーレを1-0で撃破。前半3分、右ウイングのFWジャーメイン良が決めたループ弾を守り抜き、木山隆之監督体制で初白星を挙げた。

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トップチーム昇格内定発表から268日、ルーキー守護神の小畑が「再開幕戦」で輝いた。敵地でプロ初陣となったが、枠内シュートストップや相手と競り合いクロスをキャッチするなど終始落ち着いて対応。両足で蹴れる正確なフィードを生かし、攻撃組み立てにも積極的に加わった。

開幕前には「リーグ戦出場を目標にカップ戦だったり、まずは試合に出ることを目指したい」と話していたが、正守護神のGKスウォビィクがコンディション不良で欠場。早くも出番をつかんだ。「緊迫した中でどれだけ落ち着いて普段のプレーを出せるか意識していた。結果がついてきて良かった」。アップ中から緊張で息が上がっていたというが、開始早々、シュートを止めてリズムに乗った。

普段の練習から自信を持って取り組む。「1年目とか関係なく自分のプレーを出せていたし、今日の試合も自分のプレーを出せた」。今後の試合では「持ち味のキックをもっと出したい」と意欲を見せる。

小畑は小2と小3で仙台ジュニアのセレクションを受験。しかし、いずれも最終審査で落選した。それでも小6のときに出場した大会で同ジュニアと対戦し、運命が変わった。普段はDFやFWを務めていたが、この試合ではたまたまGKで出場。チームは敗戦も仙台側から好パフォーマンスを評価され、同ジュニアユース受験を勧められた。三度目の正直で合格。「ベガルタにどういう形でも貢献したいと思った」と中1でキーパーに転向した。

高1から3年連続でトップチームのキャンプに参加する逸材だけに木山監督の期待も大きい。「本当に初めてJリーグ公式戦のピッチに立ったとは思えないぐらい落ち着いていた」とたたえた。小畑は3月に亡くなった志村けんさんとザ・ドリフターズのファン。「だいじょうぶだぁ」の精神を貫き、守護神として堂々けん引した。【山田愛斗】

◆J1GKの最年少出場記録 横浜の伊藤卓弥が95年7月1日の平塚(現湘南)戦で、最年少18歳6カ月1日でデビュー(途中出場)。同8日のC大阪戦で初先発し完封した(1-0)。小畑はデビューが3番目、先発と完封勝利は2番目の年少記録。また18歳デビューで初出場を先発で飾ったのは柏の南雄太(41=現横浜FC)に続く2人目だが、南は1失点で勝利しており、完封勝利は史上初。

 

◆小畑裕馬(おばた・ゆうま)2001年(平13)11月7日生まれ、宮城県登米市出身。5歳からサッカーを始め、アバンツァーレ仙台SC(榴岡小)、仙台ジュニアユース(東華中)、同ユース(明成)を経てトップチーム昇格。U-18日本代表にも選出。憧れはバルセロナGKテアシュテーゲン。183センチ、79キロ。利き足は右。家族は両親、姉、妹。