仙台市出身のJ3アスルクラロ沼津MF菅井拓也(29)は、被災地の思いを背負ってピッチに立ち続ける。11日で東日本大震災発生から10年。「少しの揺れにも敏感になった。先月にも東北で大きな地震があり、改めて怖さと備えの大切さを感じた。当時のことを風化させないため、10年という節目を大切にしたい」と話した。

2011年3月11日、仙台大1年だった菅井は、練習場で大きな揺れに見舞われた。宮城県柴田町の同大は、沿岸から10キロ以上の距離があるが、周辺にがれきが集まり、風景は一変。自身も心に深い傷を負った。父勝己さん(享年47)が、津波に流されて発生から約1週間後に遺体で見つかった。家計を助けるため、サッカーをやめることも考えたという。それでも、母久美子さんの「好きなことをやりなさい」という言葉に支えられ、プロサッカー選手になる夢をかなえた。

仙台市内の実家には、年末年始などに帰省する。地元の現状を目の当たりにして「少しずつ建物は復興し、街はきれいになった。それでも、まだ元の暮らしに戻れなかったり、つらい思いを抱えている人が数多くいる」。いまだ復興は道半ばであると強調した。

スポーツが持つ力を信じている。J1ベガルタ仙台が2011年リーグ4位、翌12年はクラブ史上最高成績となる同2位と躍進。プロ野球では、楽天が13年に球団創設初の日本一に輝いた。被災地に本拠地を構えるプロチームの吉報は、復興を目指す人々の希望となった。「ベガルタやイーグルスが、被災地に力を与えてくれた」と実感を込めた。

自身は沼津の地から、力を届ける。今季は2シーズンぶりの主将を務める。「被災地出身のサッカー選手として、少しでも勇気を与えられるように頑張りたい」と決意を示した。【古地真隆】

◆菅井拓也(すがい・たくや)1991年(平3)8月2日、仙台市生まれ。仙台ジュニアユース、聖和学園高(宮城)、仙台大を経て、14年に当時JFLの八戸へ加入。17年に沼津へ移籍。170センチ、67キロ。血液型A。J3通算78試合出場2得点。