今季限りでの引退を表明したアルビレックス新潟の田中達也(39)が最終節のFC町田ゼルビア戦でキャプテンマークを巻いて、先発出場。Jリーグ戦通算70ゴールはならなかったが気迫のこもったプレーを連発し、集まった1万1955人のサポーターを沸かせた。前半32分に交代する際には両チームの選手が花道をつくり、田中を見送った。試合後の引退セレモニーでは大粒の涙を流し、21年の現役生活に幕を下ろした。

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21年間の現役生活に終止符を打つ決断を下した田中の今季初出場はスタメン起用。左腕にはキャプテンマークが巻かれていた。サッカーを始めた幼少期から変わらない、がむしゃらな姿勢でボールを追った。前半32分に交代する際には両チーム選手、スタジアムのファンから大拍手を受け、ピッチに別れを告げた。試合後の引退セレモニーでは「オレンジのユニホームで引退できて良かった」と号泣した。

気迫満点のプレーを披露した。最前線でボールを引き出し、少ないタッチでパスをはたいて動き直す。右CKのこぼれ球に反応して左足でゴールも狙った。身長167センチの田中のマークは181センチの町田DF深津。体格では劣ったが懸命に空中戦も挑んだ。「チームが敵陣でプレーできるように、もっと前でパスを受けたかった」と最終戦を振り返ったが、「サッカーって楽しいな、と改めて感じた」とこの時ばかりはほおを緩めた。

J1浦和レッズから13年に新潟に加入。19年11月に戦力外通告を受けたが、20年1月に再契約。在籍9年目の今季は試合メンバーを外れることが続いた。古傷の左膝も言うことをきかなかった。それでもハードな練習を怠らず、20歳近く年の離れた選手としのぎを削った。Jリーグ通算70得点には「1」及ばなかったが、最後までファンを魅了した。出場機会に恵まれなかった2年間でも謙虚に懸命に練習に取り組み、チームメートの模範となり続けた。「たくさんケガをしながらも頑張ったな」と最後は自分をほめた。

チームはホームでの最終戦を勝利で飾れず、6位でフィニッシュ。田中は「J1昇格以外、納得する答えはない。頑張ってほしい」と、来季を戦う仲間に熱いメッセージを送った。【小林忠】

○…J1浦和、日本代表でともに戦ったフランクフルトDF長谷部誠(37)にはSNSで引退を報告した。「達也が辞めたから、俺も自分で(引退時期を)決められるな」と長谷部からメッセージがあったことを明かし、「あいつがドイツで頑張っている姿が見たい。『やれるだけやれ』と伝えた」と元同僚の現役続行を希望した。

○…今季限りで退任するアルベルト監督(53)は試合後のセレモニーで選手、チームスタッフらに頭を下げた。「妻、娘、新潟生まれのユナ(ペットの犬)、私は新潟人だと認識している。私たちの心に『新潟』の名が刻まれている」と話し、日本語で「ありがとう」とあいさつした。