J2で18位のヴァンフォーレ甲府がPK戦を制し、初優勝を飾った。J2勢としては、11年度のFC東京以来11大会ぶりの快挙。J1リーグで現在3位、ルヴァン杯優勝に王手をかけているサンフレッチェ広島を相手に番狂わせを演じた。これでアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の出場権も手にした。

試合は前半26分、甲府が左CKからの流れでMF長谷川元希、荒木翔とつなぎ、ゴール前に入ったFW三平(みつひら)和司が右足を合わせて先制した。

両チームとも球際の強いプレーが特長だが、甲府の寄せが速く、今季快進撃を続けてきた広島が主導権を握れない時間が続いた。

1点を追う広島は、後半開始からFWベンカリファ、MFエゼキエウらを投入して反撃。甲府は自陣での時間が増えたものの、同29分にはFWウィリアン・リラのシュートがクロスバーに直撃するなど、追加点の好機もあった。

後半39分、広島が追いついた。エゼキエウのパスを受けたMF川村拓夢が左サイドの角度のない位置から、思い切りのいい左足シュートをゴールネットに突き刺した。これで1-1となった。

延長戦に突入し、広島が甲府陣内に押し込んで試合を進める。そして後半10分、縦パスを甲府DF山本英臣の手に当たり。ハンドの判定でPK。この絶体絶命のピンチで、35歳GK河田晃兵が右へ跳んで広島FW満田誠のシュートをビッグセーブした。まさに神がかり的なプレーだった。

120分を戦い終えて同点のまま、試合はPK戦に持ち込まれた。先行の広島は4人目の川村のキックを河田がセーブ。最終5人目で甲府は、クラブ在籍20年の42歳山本が冷静に左へシュートを決め、激闘に決着をつけた。

甲府はJ1勢に5連勝しての戴冠だ。3回戦で札幌(2○1)、4回戦で鳥栖(3○1)、準々決勝で福岡(2○1)、準決勝で鹿島(1○0)をなぎ倒し、決勝に勝ち上がった。迎えたファイナルでも広島を退けた。

チーム名の「ヴァンフォーレ」とは、フランス語の「VENT“ヴァン”(風)」と「FORET“フォーレ”(林)」の組み合わせで「風のように疾(はや)く、ときには林のように静かに」で知られる戦国時代の武将、武田信玄の旗印「風林火山」に由来したものだ。そのチーム名を体現する戦いぶりで“戦国”天皇杯で最大の下克上を巻き起こし、天下を取った。

天皇杯決勝は元日恒例のイベントだが、今季はワールドカップ(W杯)カタール大会が11月20日に開幕するため、Jリーグなどの公式戦も含め前倒しで開催されている。

◆天皇杯メモ 今大会が102回目。2342チームが参加した。11月にW杯カタール大会が始まるため、決勝は恒例の元日ではなく10月に開催された。優勝チームは来季のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権を獲得。チーム強化費として1億5000万円(税別)が与えられる。