高校サッカーの名門・滝川二(神戸市西区)の同門監督による初対決は、先輩のセレッソ大阪小菊昭雄監督(47)に軍配が上がった。

「まさしく激闘だった。サポーターにサッカーの素晴らしさ、楽しさを伝えられた試合だったと思う」

記者会見に臨んだ小菊監督は、18歳FW北野の後半終了間際の決勝ゴールという劇的勝利にも、過剰な喜びは見せなかった。

敗れたヴィッセル神戸吉田孝行監督(46)は、滝川二時代の小菊監督の1学年後輩。この試合で、神戸は首位から2位に陥落したものの、堂々たる采配で互角の内容だった。

小菊監督の笑顔が少なかったのは、ともに健闘した吉田監督への配慮、リスペクトがあったためだろう。

J1はわずか18クラブしかなく、同じ高校のサッカー部で1つ違いの先輩と後輩が監督として戦えること自体、奇跡的かもしれない。しかも、優勝争いに絡む一戦。この舞台に立てたことは、2人にしか分からない感慨があったはずだ。

「(吉田監督との初対決には)いろんな感情はある。不思議な気持ち、喜び、感謝…。一番強いのはJ1の舞台で(高校の)仲間と戦えたのはうれしい。感謝したい」

両軍はともに攻守にアグレッシブで、気迫が前面に出ていた。ボールの保持率といった数字や理屈を抜きに、Jリーグのおもしろさが凝縮されていた。少なくとも、勝ったC大阪にとっては、今季最高試合になったはずだ。

滝川二の初代監督で、両監督の恩師にあたる黒田和生さん(74)を、小菊監督はスタジアムに招待したかったというが、今回は都合が合わなかったという。

「怯(ひる)まず 驕(おご)らず 溌剌(はつらつ)と」

高校時代、黒田さんから教えられた滝川二の部訓は、小菊監督が引き継ぐ形で今も指導の源にある。この試合を終えた時点で、C大阪は暫定ながら5位に浮上した。後半戦も勇敢なサッカーで、逆転でのリーグ初優勝を目指す。