藤枝MYFCが歴史的な1勝を挙げた。2位清水エスパルスに2-0で完勝した。0-0で迎えた後半にFW矢村健(26)の強烈ミドルで先制すると、MF横山暁之(26)が鮮やかなループシュートで追加点。5月の前回対戦で0-5の大敗を喫した相手にリベンジし、ホームでは5月21日の徳島戦以来約4カ月半ぶりの白星を挙げた。清水は2試合連続無得点で15試合ぶりの黒星となった。

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藤枝が静岡の勢力図を塗り替えた。J2初年度で、93年のJ開幕から参戦している「オリジナル10」を粉砕。大挙して訪れた清水サポーターは静まり返り、藤色のスタンドが歓喜に揺れた。クラブ史上最多6288人が来場した試合後の会見で須藤大輔監督(46)はクラブの思いを代弁した。「この空間を作ってくれた方々がいる。運営や広報、営業も苦労した。その中で現場がやらないといけないと思った試合。正直、うれしい限りです」

過去の失敗を成長につなげた。5月の前回対戦は0-5。リスクを伴うハイプレスが裏目に出た。この日は自陣でのブロックを優先。矢村は「前半0-0ならチャンスはあると思った」。後半9分、敵陣でのボール奪取から強烈な右足ミドルで先制点。5試合ぶりの失点でバタついた相手の隙を見逃さなかった。同25分には横山がクリアミスに反応し、右足ループ。飛び出していた元日本代表GK権田をあざ笑うかのような芸術弾で勝負を決定付けた。

藤枝は磐田戦を含めた「静岡三国決戦」で初勝利。横山も「清水に勝ったという事実を喜びたい」と笑顔だった。今季はシーズン途中に主力2人がJ1クラブに移籍した。一時は17位まで転落したが、須藤監督がてこ入れした守備が奏功し、9月10日の熊本戦で連敗脱出。首位町田、4位東京Vに引き分けた自信を清水との一戦にぶつけた。

強化費で10倍以上のタレント集団に、痛快なリベンジ劇を演じてみせた。指揮官は「最高のエンターテインメントサッカーができた。今後もサッカーの力で心を震わせる試合をやっていきたい」と誇示した。プロスポーツ界では強者が勝つのではなく、勝ったチームが強い。クラブの一体感で難敵に立ち向かった藤枝が、強かった。【神谷亮磨】