予選会トップ通過の実力はダテじゃない。東京国際大が、大志田秀次監督自身も「想定外」と驚く往路3位に食い込んだ。過去3度の出場で、初出場の16年往路12位が最高成績。シード権さえ獲得したことがない箱根の新興勢力が、一気に開花した。

山登りの5区に起用された山瀬大成(4年)は、8キロ過ぎで、東海大の西田に抜かれ4位に転落した。しかし、必死で食らいつく。16・3キロの山登り最高地点を過ぎれば、下るだけだ。大志田監督からは「3位と4位じゃ全然違うぞ」と、声が飛んだ。

残り約500メートルで西田を抜き返し、3位でゴール。厳しい山登りに「もう走らん! ここは」と、思わず叫んだ。しかし、その後は、疲れよりも興奮が上回り、「負ける自信はなかった!」、「花の2区より花の5区」と、珍言を連発だ。

箱根駅伝の開催に尽力した金栗四三と同じ熊本・玉名市の出身だ。帰郷した時には、必ず金栗のお墓に参るという。その思いが通じたのか、「1週間前から緊張で熱が出そうだった」という気持ちを奮い立たせる粘りだった。

その山瀬の粘りを導いたのが、チームが誇るヴィンセントの活躍だ。日本インカレ5000メートルの覇者は、2区の伊藤(4年)からタスキを受けると、初の駅伝出走ながら、一気に7人をごぼう抜き。首位に立つと、箱根史上初めて3区で1時間を切る驚異的な区間新をマークした。

出身のケニアは走る路面は土だ。来日して最も苦労したのが硬いアスファルト上での走りだった。しかし、それも克服。日本語はまだ「ありがとう」だけのあいさつ程度。走りほど学びは早くないが、「今度は違う区間を走りたい」と早速、来季に向けて自分をアピール。大志田監督は「出来過ぎ」と喜びを隠さないが、「ちゃんとチャンスをつかんだ」と胸を張った。