新潟アルビレックスランニングクラブ(RC)が、新型コロナウイルス感染拡大防止へ、アクティブな活動を続けている。所属する19人のトップ選手は不自由な練習を行うなか、閉塞(へいそく)した環境を強いられる子どもたちのケアに努めている。地域貢献をテーマにアクションを起こすクラブの大野公彦社長(42)に聞いた。

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新潟アルビレックスRCにとって、20年はクラブとして勝負をかける年だった。東京オリンピック(五輪)が開かれるはずの特別なシーズン。抱えるトップ選手19人で五輪出場選手輩出を狙っていた。約3億8000万円の事業規模だが、過去最大の予算を組んで備えていた。ところが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で東京五輪は来年7月に延期。緊急事態宣言が出されるほど情勢は深刻化した。そんな状況下でクラブは不足していたマスク5000枚を4月17日に新潟市に寄付、同24日には新潟県に1万枚を寄贈してきた。「アル美健康プロジェクト」の一環だった。

大野社長 先行き不透明で1カ月先も読めない。だからクラブ経営も、選手たちも、先を見ずにその時、出来ることをやろうと…。マスクは今、供給され始めているが、子ども用のマスクはまだ足りない。だから「ステイホーム」にちなんだキャンペーンで子ども用マスクを1人に10枚配布する企画を立てた。クラブのツイッター、インスタグラムをフォローしてもらい、子どもや親子が家で体を動かしている動画、写真をアップしてもらう。「頑張ろう」を共有できる投稿へ子ども用のマスクを配布。もうひとつは、トップチームの選手のオンラインレッスンを始める。最初はクラブのスクール生を対象にするが、一般の人たちにも広げていきたい。

新潟アルビRCは「健康二次被害」に対応する取り組みも進めている。学校が休校になり、外出を自粛している子どもたちの体力低下、心のストレスを解消させる運動の指導だ。両親が仕事で昼間の自宅生活が困難な子どもたちを預かる「放課後児童クラブ」にコーチをボランティアで派遣している。広いスペースで体を動かす程度の運動だが、8日までに15カ所を巡る。休校が長引けば、サポートを延長する予定だ。企業が抱える陸上部ではなく、地域に支えられているクラブだからこそ、地域貢献に力を入れる。

大野社長 こういう状況だと、真っ先にスポーツ、芸術の分野が活動を停止する。「スポーツなんかやっている場合じゃない」となる。だからこそ新潟アルビRCが必要というアクションをとり続けたい。クラブは地域に役立つ組織になっていなければ成り立たない。感染拡大が終息して元の状態に戻った時、スポーツの価値は今より上がっていなければならない。

新潟アルビRCは「1日1日、出来ることをやっていく」を掲げながら独自の地域貢献を展開している。今後はクラブ単独ではなく「アルビレックス」の名称を持つクラブと共同して地域貢献する道も探っている。【涌井幹雄】

◆大野公彦(おおの・きみひこ)1978年(昭53)1月3日、新潟市生まれ。新潟第一-国際武道大。現役時代は陸上中距離の選手。県体協のスポーツアドバイザーを経て、4年間はアップルスポーツカレッジ教師。05年の新潟アルビレックスRC設立時の創業役員。13年から社長に。日本実業団陸上競技連合の理事兼強化委員。県陸協の理事。172センチ、67キロ。血液型O。