全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。5連覇を狙う旭化成、マラソン東京五輪代表の中村匠吾(28)を擁する富士通、同じく東京五輪代表の服部勇馬(27)がエースのトヨタ自動車が3強と言われている。SGホールディングスは優勝候補には挙げられていないが、台風の目となるかもしれないチームだ。12年ロンドン五輪代表の佐藤悠基(34)が11月に入社し、若手にも好素材がそろい始めた。

今月4日の日本選手権1万メートルに、佐藤の意気込みが現れていた。27分41秒84で7位。11年前(09年)にマークした27分38秒25の自己記録に3秒半と迫ったのだ。佐藤は選手兼アドバイザーとして入社したが、選手としても本気であることを示した。

「マラソンは来年秋まで走りませんが、27分28秒(東京五輪参加標準記録)は来春、切りに行こうかと思っています。日本選手権は練習通りの走りができたので、一段階上のトレーニングができれば出せない記録ではありません」

佐藤は11年から日本選手権1万メートルで4連勝し、2度の世界陸上、ロンドン五輪、アジア大会と出場した歴戦のランナーだ。ニューイヤー駅伝でも10年は3区(13.7キロ)、11、12年は4区(22.0キロ)と3年連続区間賞を獲得。10年、11年と日清食品グループの2度の優勝に貢献した。

その後は時間をかけてマラソンに転向し、2時間8分58秒までタイムを縮めた。東京五輪代表入りはできなかったが、東京マラソンでは19年、20年と続けて、30キロを1時間29分台前半の日本新ペースで通過した。スピードを生かした佐藤流のマラソンをつかみつつある。今回の日本選手権も「マラソン要素の入ったトラックの動き」で走ったという。

佐藤の1万メートルの27分45秒未満は7年ぶりのこと。駅伝でも4区、または3区で区間賞を取っていた頃の走りが期待できる。だが佐藤は、「仕事としてしっかり自分の役割を果たすのは以前と同じですが、SGは若い選手が多いチームなので、若手主体のメンバーで結果を出したい」と話す。

佐藤が言うようにSGホールディングスは近年、東海大や青学大から箱根駅伝やインカレで活躍した選手が入社している。青学大の昨年度のキャプテンだった鈴木塁人(23)や昨年の日本選手権3000メートル障害優勝者の阪口竜平(23=東海大卒)、同じく東海大で出雲全日本大学選抜駅伝で2度区間賞を取っている関颯人(23)ら、大物新人が大量入社した。

それに加えて高卒4年目の千葉直輝(22)が、彼らに負けないくらい成長している。関西実業団駅伝では千葉が4区で区間新(区間2位)と好走し、鈴木は6区で、入社2年目の橋詰大慧(23=青学大卒)が7区で区間賞を獲得した。

塩見雄介監督代行も若手に期待を寄せる。

「鈴木は駅伝で力を発揮するタイプですね。千葉は日本のトップレベルに成長してほしい選手。関は箱根駅伝前からヒザに痛みを抱えていましたが、完治して今は調子が上がってきています」

上述の選手たちはスピード区間といわれる1区、3区で活躍する能力を持っている。後半区間の単独走では「合宿を見ていると三上(嵩斗、24=東海大卒)が強い」と、入社2年目の副キャプテンの名前を監督代行は挙げた。

若手主体のチームに合流したことで、佐藤も「年齢を気にせず、刺激を受けながら練習できています。(アドバイザーとして)教えることで新たな気づきもある」と新しい環境がプラスとなっている。

駅伝は若手主体で戦うが「スタッフから結果を出すために最善と言われる区間」を走る準備をしていく。「4区なら区間記録を目標に走れば貢献できます。体の仕上がりも良いですしね」と、静かな口調ながら意欲十分だ。

元代表ランナーの加入と若手の充実。SGホールディングスが3強にどんな戦いを挑むのか、注目される。

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