男女の仙台育英(宮城)が「3本柱」を軸に雪辱を期す。全国高校駅伝(都大路)は今日26日に京都で号砲。昨年2位の男子はエース吉居駿恭、堀颯介主将(ともに3年)、ケニア人留学生ボニフェス・ムテチ(2年)が、大学生でもトップ選手と称される1万メートル28分台を誇り、チームの骨格だ。昨年3位の女子は主将兼エースの米沢奈々香(3年)が「日本人最速」で、山中菜摘(3年)と杉森心音(2年)の安定感も光る。1年前は男子が13秒差、女子が35秒差で、ともに1位世羅(広島)に及ばなかったが、2年ぶりのアベック優勝へ視界は良好だ。【取材・構成=山田愛斗】

◆男子

<絶好調、エース吉居>

エース吉居が絶好調だ。先月の1万メートル記録会で高校歴代3位となる28分11秒96をマーク。「3年間で見ても過去1番ぐらいにいい状態」と自信を示す。19年は最終7区でトラック勝負を制し、3秒差優勝の原動力に。昨年は1区区間7位で「もう少し攻めていれば優勝できた」と反省が残った。2年連続で1区を任され「1万メートルで好記録を出した勢いがあり、速さもしっかり証明できた。28分30秒あたりを狙い、区間賞と優勝を目指して戦いたいです」。卒業後は中大に進学。仙台育英OBで同大の兄大和(2年)と再び共闘する。

<コツコツ地道、堀主将>

堀はコツコツ、地道な積み重ねでエース格に成長した。Bチームで戦った昨年の東北高校駅伝で駅伝デビューすると、1区区間3位と好走。約1カ月後の都大路で6区に抜てきされ、区間賞で応えた。先月の1万メートル記録会で28分40秒90の好タイムをマーク。「同じチームに(吉居)駿恭というトップ選手がいて、必死に追いかけ、切磋琢磨(せっさたくま)できたのが成長につながった」。今大会は3区で出陣。「3年間の集大成なので、優勝へ積み重ねてきたことを自信を持って出したいです」。努力の主将が有終の美を飾る。

<雪辱に燃える、留学生ムテチ>

留学生のムテチはリベンジに燃える。昨年は3区区間9位に沈んだが、今夏の全国高校総体では3000メートル障害で優勝し、先月の1万メートル記録会で28分11秒48をマークと好調だ。今大会は4区で出場し「目標タイムは23分を切るぐらい。1番になりたい」と意気込む。

◆女子

<「日本人最速」主将兼エース 米沢>

「日本人最速」の米沢から目が離せない。19年は2区区間6位で優勝に貢献。昨年は1位世羅、2位神村学園(鹿児島)の留学生と壮絶なアンカー勝負を演じ、必死に食らいつくも、トップと35秒差の3位でフィニッシュし、個人成績は5区区間3位だった。今夏の全国高校総体は1500メートル2位、3000メートル3位。またしても留学生に優勝を阻まれたが、2種目で日本人トップに輝いた。けがなく練習を積み「順調に仕上がっています。やることはやってきたので、自信を持ってスタートに立ちたいです」と充実感をにじませる。

走るたびにすごみが増している。今季は1500メートル、3000メートル、5000メートルで自己ベストを塗り替え、今月の5000メートル記録会では高校歴代6位の15分31秒33を刻むなど絶好調。今大会は最長6キロの1区に名を連ねた。県大会は同区間を18分37秒で走り、東京オリンピック(五輪)1万メートル代表の新谷仁美(33=積水化学)が興譲館(岡山)3年時の05年に樹立した、都大路の1区区間記録18分52秒超えを期待される。「速いので厳しいです」と謙遜するが「最高の走りをして、最後の都大路は笑顔で終わりたい」。米沢が古都京都で衝撃を残す。

<「駅伝娘」復活、光る安定感 山中>

駅伝にめっぽう強い山中が間に合った。今年3月の伊那駅伝(長野)で無念の途中棄権。左足の疲労骨折で長期離脱した。「『全国高校駅伝の優勝につながる走りをしよう』と優勝を掲げていた中で、自分がタスキを途切れさせてしまい、チームに申し訳なかったですし、本当に悔しい気持ちでした」。中学からスタートした陸上人生。大けがとは無縁で「走れないことで気持ち的に落ちてしまい、また走れるかなと不安でした」。同級生の米沢からは「12月までに絶対に治して一緒に走ろう」と激励され、10月に本格復帰した。

タスキパワーで真価を発揮する。中学3年時の18年に東日本女子駅伝で8区区間賞と手応えをつかむと、翌年は3区区間賞。都大路は19年が4区区間賞、昨年が1区区間2位で、同年の都道府県対抗駅伝は7区区間2位と外さない。「駅伝は得意です。走っているときは1人でも、みんながつないでくれて『もっと頑張らないとな』と気持ちが高まります」。今大会は3区に臨む。「今年は走りで引っ張れなかったので、最後の都大路は優勝に貢献できるように力を出し切りたいです」。復活した「駅伝娘」に怖いものはない。

<こだわる1秒、次期エース杉森>

次期エースの杉森は1秒にこだわる。米沢と同じ浜松・北浜中出身で、先輩を追うように仙台育英に入学。昨年の都大路は2区区間7位と上々デビューも「奈々香先輩が留学生と最後まで諦めず戦う姿を見て、自分がもう少し速く走っていれば優勝できたかなと感じますし、負担をかけてしまい、悔しかったです」。北浜中1年時の17年に1区杉森、5区米沢の並びで1秒差で全国出場を逃した。それだけに2区で出場する今大会は「日本人トップを目指し、絶対優勝という気持ちが強いです」。1秒の重みをかみしめながら走る。