男子100メートルで自己記録9秒97のサニブラウン・ハキーム(23=タンブルウィードTC)が、4大会連続の世界選手権(7月、米オレゴン州)切符獲得に“王手”をかけた。予選は今季日本人トップの10秒11(無風)で全体1位、準決勝も10秒04(追い風0・8メートル)の同1位で、参加標準記録(10秒05)を突破した。10日の決勝で3位以内に入れば、世界選手権の代表に内定する。元日本記録保持者の桐生祥秀(日本生命)らが決勝に進出した。

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中盤から抜け出すと、サニブラウンの体がゴールテープに引き寄せられる。焦点となる、世界選手権の参加標準記録との差。100分の1秒上回る10秒04に、浪速の陸上ファンも沸いたが、本人は淡々としていた。「まずまずかな。ここで満足しても何にもならないので」。あくまで通過点。余裕たっぷりの表情が、完全復活をより際立たせた。

東京五輪200メートルで予選落ちに沈んだ昨年度は、ヘルニアによる腰痛に苦しんでいた。故障なども経て、週6回の練習を“2勤1休”のペースに見直すなど、試行錯誤の日々だったという。「歩くだけで神経痛。(無事に走れることを考えると)幸せだと思う。久々に陸上を楽しめた」。口角をわずかに上げた。

フロリダを拠点に力を磨く23歳。ともに練習する海外選手の中には、自己ベスト9秒台もざらにいる。「普段から9秒80と一緒に(練習)してるんで。日々の練習もめちゃくちゃ厳しいし、これだけやっているので負けないという感じにもなっている」。海外での武者修行が自信を生む。

10日の決勝で3位以内に入れば、4大会連続の世界選手権が待っている。初出場は15年北京大会。16歳で臨んだ大舞台だった。200メートルでは過去に決勝進出の快挙を遂げたが、100メートルでは結果を出せていない。再びつかみたい世界への切符。「反応が遅すぎるので(決勝は)もっと集中しないといけないですね」。伸びしろは決勝に残している。【佐藤礼征】