記録的な猛暑が続いている今年の夏。そんな中でも、全国大会へ出場を決めたさまざまな競技の選手たちは、夏の暑さに負けないほどの熱い戦いを繰り広げている。

飛び込み競技もその1つだ。

全中は8月17、18日に宮城県利府町のセントラルスポーツ宮城G21プールで、インターハイは17~20日に高知県立春野総合運動公園水泳場で開催された。

今年のインターハイには、10m高飛び込みで東京オリンピック7位入賞し、今年の世界選手権では銀メダルに輝いた玉井陸斗(須磨学園高/JSS宝塚)も出場した。

開催地の高知県は屋外プール。玉井にとっては初めての経験だった。

2016年リオデジャネイロ五輪の飛び込み競技用プール
2016年リオデジャネイロ五輪の飛び込み競技用プール

近年、国内での大会は室内プールでの開催がほとんどだ。それには2つの理由がある。1つは全国に室内の飛び込みプールが増えたこと。そして、もう1つは、2007年8月に行われた日本選手権での出来事だ。

その年の日本選手権の会場は、別府市営青山プール。大分県に唯一ある屋外の飛び込みプールだ。

この大会は、国際大会派遣選手の選考会も兼ねていた。しかもその国際大会とは、翌年に開催される北京オリンピックの最終選考会となるワールドカップ。選手たちにとっては人生を左右するほどの大切な試合だった。しかし、その開催期間にまさかの大型台風が重なってしまったのだ。

オリンピック初出場を目指す私は、その会場にいた。想像以上の暴風雨。朝起きて窓の外の光景に不安になったことを今でも覚えている。あまりに台風の影響が大きく、なかなか競技を開始できなかったため、準決勝を省略して予選と決勝のみの戦いに変更された。

選手たちは、強風にあおられながらも何とか飛んでいるといった状況だった。特に10m高飛び込みの台上では、普通に立っていることもままならないほどの風。そのため、本来は立ち直しが許されない演技開始時の逆立ちも、立ち直しOKというルールに変更され、何とか試合は行われた。

しかしながら、事実上オリンピックがかかった重要な国内選考会。大会後に「このような悪天候によって選手のパフォーマンスに影響が出るのは問題ではないか」という議論がなされ、翌年からは室内プールでの開催がメインとなった。


そうでなくても屋外プールでは、太陽の光や空の色、周りの景色や雨風の強弱によって、飛ぶ時のコンディションはガラリと変わる。風の方向によって「飛ぶ時の重心」を変えたり、空中でも「空と水の色の違い」で混乱しないよう、いつも以上の集中力が必要になる。

さらには、直射日光による目の疲れや日焼けなどの体への負担も加わり、疲労度は室内プールとでは比にならないほど。特に、常に同じ環境で練習が出来る室内プールがメインの選手にとっては、大きな環境の変化となる。

しかし、今年のインターハイの会場もそうであるように、飛び込みプールが外にしかない地域はたくさんある。そして、これまでの経験からも国際大会でも屋外プールでの開催は大いにあり得る。

そのため、どんな状況でも戦えるよう、さまざまな環境で練習しておくことは、選手にとって大きな「武器」になる。

私たちの時代に比べ、国内での練習環境が良くなってきているのはとてもいいこと。しかし、どんな環境でも自分の力を発揮できるよう、たくさんの経験を積むことも大切な練習の1つである。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)