人気トレーナーの「美ボディー」の秘訣(ひけつ)とは? クロスフィットトレーナーでモデルとしても活躍するAYAさん(33)を取材して、奮起した。

 都内某所。AYAさんはVネックの白のTシャツに黒のホットパンツ姿でさっそうと現れた。身長175センチ。6つに割れた腹筋、長い手足についたしなやかな筋肉。これぞ、“現代版美ボディー”だ。「細いことだけが美しさの条件ではない。強くてしなやかな筋肉も女性の美しさ。そこを追求したい」。話を聞きながら、目にする両腕の上腕二頭筋と浮き出た血管から説得力は2割増しだった。

クロスフィットへの思いを語るAYAさん(撮影・峯岸佑樹)
クロスフィットへの思いを語るAYAさん(撮影・峯岸佑樹)

 人気女優やモデル、トップアスリートのパーソナルトレーナーも務め、意識の高い女性から絶大な支持を誇る美のカリスマ。人生経験をもとに、日本人のトレーニングに対しての意識を変えようと、自身が体現者となって「変革」を訴えてきた。

 兵庫県出身。中学時代は陸上部、高校時代はバレーボール部に所属した。運動好きで体育大進学後は、フィットネスインストラクターの資格を取得。その容姿からスカウトされてモデルの仕事も始めた。「スポーツもファッションも大好きだけど、一番苦しい時期だった」。日本のモデルは細くて薄い体が理想とされ、周囲から「筋肉はいらない」と言われた。一時期は、口だけでトレーニング指導したが、生徒が納得するはずはなかった。両立が難しく、悩んだ。

引き締まった美ボディーを披露するAYAさん
引き締まった美ボディーを披露するAYAさん

 5年前-。ある出来事が考え方を変えた。海外のフィットネス動画を視聴していた時、下着ブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」のファッションショーが「おすすめ」として表示された。クリックすると「度肝抜かれた。腹筋が割れた筋肉質なモデルがランウエーを歩いていた。米国は『フィットネス大国』と言われ、フィットネスが文化に根付いていると気づかされた」と、驚愕(きょうがく)した。

 米・ロサンゼルスなどでは早朝から老若男女関係なくジムに通ったり、海辺を走るのは日常茶飯事。女性は鍛えている自信からか腹や足を出すファッションは当たり前だ。「日本の常識にとらわれることはない」。自分らしく、AYA流を貫くことを決意した。

 米国発の短時間で有酸素運動と無酸素運動を組み合わせて動きを続ける「クロスフィット」にのめり込んだ。脂肪燃焼効果と筋力アップ効果が高く、体幹を強化して「動ける体」を作る。都内のスタジオでは240キロの巨大タイヤや懸垂器具などを使う。1日90分のトレーニングを週5日行う。特定の筋肉を大きくするビルディングとは異なり「人間の持っている身体能力を最大限に引き出すトレーニング」と表現する。

引き締まった美ボディーを披露するAYAさん
引き締まった美ボディーを披露するAYAさん

 食事も大切だ。自身のインタスタグラム(フォロワー約38万人)で手料理を公開すると「いいね!」は1・5万件を超えるほどの料理上手でもある。4月には初のレシピ本「AYAごはん」(KADOKAWA)を発売した。「完全糖質オフは非現実的。朝か昼に炭水化物を摂取する。肉は手のひらサイズ、野菜はおなかいっぱい。果物は野菜より少なく、ひとつかみ程度のナッツを取ることを心掛けると良い」。美ボディーを目指すためには運動と食事はワンセットで「運動で筋肉を鍛えて、食事でリカバリーが重要」と説明。ただ、土・日曜日は「チートデイ」と呼び、何でも口にして良い日がある。大好物のケーキなどを食べてストレスをためないように心掛けている。

 記者も同様だが、年齢を重ねるにつれて運動と食事制限の継続が難しいと感じる。言い訳かもしれないが続けることの難しさ…。さらに、飲酒量は増える一方で、負のスパイラルが生じている。「甘え」「時間は作るもの」と言われてしまえばごもっともだが、AYAさんは両立させるためにも「難しくない目標設定が大切」と言う。

 「届かない目標は自信をなくす。例えば、『○日まで○キロ減量』と決めた場合、かなうような目標設定をする。達成したら徐々に設定を上げていく。この道のりや過程が大切」

モデルとして活躍するAYAさん
モデルとして活躍するAYAさん

 体を鍛えるのが日常という文化を日本に広めて、街中を「ロサンゼルス化」することが夢という。「運動は『運』を動かすと書く。私自身もそういった経験をしてきた。自分を信じれば、体も気持ちも絶対に変わる」。ストイックなAYAさんは、トレーニングでは生徒に対してあまり褒めず厳しい言葉をかけてやる気を出させる。「体づくりのかがみでありたい」。こう言うように、自身に対しても非常に厳しい。説得力がある美ボディーと言葉の数々。記者も取材を通して、肉体改造への気持ちが奮い立った。ありがとうございました。【峯岸佑樹】