立川新(20=東海大)が世界王者の橋本壮一(26=パーク24)を止め、世界選手権代表の座に名乗りをあげた。立川は準決勝で橋本と対戦。抜群の「受け」の強さで相手の技を封じ、指導3で反則勝ちした。優勝で世界選手権代表に内定する橋本を止め、自らは決勝でも指導2で勝ってグランドスラム大会初優勝。「優勝だけを狙っていた。世界選手権に出たいので」と胸を張って言った。

 「投げられない」柔道が持ち味だ。愛媛・新田高時代から武器だった「受け」の強さに、東海大でさらに磨きをかけた。上水研一朗監督(43)は「立川の圧力が強く、技をかけられない相手の方が疲れてしまう」と説明する。組み手を嫌って無理な技をかける相手に「指導」がいくのだ。

 決勝を含めた6試合で、一本勝ちは寝技で1試合だけ。4試合は技のポイントがなく「指導3」の反則勝ちだった。この日、相手に出された「指導」は計14。立川の「受け」の強さが、相手を自滅に追い込んだ。

 「今まで、こんなタイプの選手は見たことないですね」と、上水監督は苦笑いする。この日世界選手権代表に内定した高藤や阿部、さらに73キロ級リオ五輪金メダルの大野ら、日本の軽量級には積極的に技をかける選手がほとんどだが、立川は異色。「受け」だけで世界の頂点まで駆け上がる可能性さえある。

 「追いつくには、まだまだ。スタートラインに立ったばかりです」。五輪と世界選手権の王者がいる大混戦の73キロ級代表争いに加わった立川、控えめに話す。それでも、2日前に20歳になったばかりの新鋭は「誰にもできない柔道で、東京五輪の金メダルが目標。そのために、まず世界選手権に出て優勝したい」と堂々と言ってのけた。