スーパーエース清水邦広(31)が、パナソニックを5年ぶり4回目の頂点に導いた。豊田合成に第1セットを先取されたものの、チーム最多27得点をマークし3-1の逆転勝利の原動力になった。選手生命を脅かされる故障を克服、今年9月に急死した元チームメートへ手向けの優勝を勝ち取って代表復帰、20年東京五輪出場にも意欲を見せた。

 強烈なジャンピングサーブが相手守備を切り崩す。最後も清水だった。返ってきたチャンスボールをクビアクが決めて優勝をつかんだ。仲間と抱き合った清水はコート上で「苦しい思いをしてきたから、ここにいられる」。吐き出した言葉に思いがにじんだ。

 準決勝東レ戦の30得点に続くチーム最多の27得点。この日も左剛腕がうなったが、会見の最後に「1年前は地獄でした」と笑顔を消した。昨年12月、リーグ戦中に右足首周状骨を疲労骨折。医師からは完治を保証されなかった。長かった治療とリハビリの日々。再発すれば選手生命の危機という恐怖にも耐えた。

 今年5月の黒鷲旗は時間限定で復帰し、8月中旬に本格的な練習を再開。そして9月3日。パナソニックで7年間ともに戦った元日本代表の谷村孝さんが、心筋梗塞のため35歳の若さで亡くなった。「こんな悲しいことは…」。ツイッターにつづった清水は故障完治とチームメートと一緒に先輩に勝利を贈ると誓った。10月に開幕したVプレミアリーグからベンチには谷村さんのネーム入りユニホームが置かれている。

 勝てないパナソニックが14年の黒鷲旗以来の優勝。リーグも13勝1敗で首位を快走中だ。「孝さんのためにも勝ち続けたい。五輪も選手である以上、目標にしたい」。清水が勝利の中心に居続ければ、代表復帰、20年東京への道も開けてくる。【小堀泰男】

 ◆清水邦広(しみず・くにひろ)1986年(昭61)8月11日、福井市生まれ。福井工大福井-東海大。大学在学中の07年、20歳で日本代表初選出。09年パナソニック入り。代表として同年のワールドグランドチャンピオンズ杯銅メダル獲得、15年アジア選手権優勝などに貢献。193センチ、98キロ。左利き。ポジションは攻撃専念のオポジット。愛称「ゴリ」。14年12月に歌手の中島美嘉と結婚。